怠惰な、怠惰な週末の顛末
ひとは、ひとり個人の中に、怠惰で自堕落な自分と、積極的でまじめな自分とが共存しているのではないか、と勝手に思っている。そうでない、まじめな部分しか持っていない人にとって、私のような存在など、あってはならないものだろう。でも、私のおおよそ90%は怠惰な自分だ。
先週末。怠惰で自堕落な私が100%出てきた。かみさんは田舎に帰っている。なにもすることはない(本当は、あった)。土曜日、朝寝をして、昼頃起きた。これから日曜日の深夜にいたるまでの、私の3つの自堕落を勝手に書く。ITmediaにそんなこと書いて良いのか、って?いいじゃん。
■■■
スパゲッティを作って腹を満たし、DVDを見始める。DVDはTUTAYAでは借りず、なんとか購入している。この日のように、突然、やまのようにビデオを見たくなるとき、対応できるからだ。
「Wild Wild West」。単に久しぶりだから、見た。ウィル・スミスが若い、かっこいい。まだ若いケヴィン・クラインがいい味である。ラブレス役が、あの「ハリー・ポッター秘密の部屋」にでてくる、格好つけてるけど、実は腰抜けのロックハート先生役のケネス・ブラナーだったとは、びっくり。あぁ、ちょっと私は普通の視力は悪いくせに、動体視力がかなり良いほうで、ウィル・スミスとそのガールフレンドが大きな水槽内でいちゃいちゃしていて、馬車が水槽の足場を壊してウィル・スミスが落ちてくるとき、なにか移ってはいけないものが、瞬間、映っているように見えたのは、気のせいか。
あと、内容は省くが、「柳生一族の陰謀」とか「リーサル・ウェポン」「スパイダーマン」などを見た後、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の第一作目と第二作目をみた。バイプレイヤーが好きな私としては、ここでも、見つけましたね。若い女性の副主人公エリザベス・スワンのお父さん役、ウェザビー・スワンの役がジョナサン・プライスだ!
ジョナサン・プライスだと「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」でのジェームズ・ボンドの敵役「エリオット・カーヴァー」役がこのジョナサン・プライスなんですね。独特の英語のアクセントで、実に存在感がある。ジョナサン・プライスはこのほかにも、「バロン」の総督役もやってましたね。
■■■
ビデオも見るが、本も乱読した。ひとつ気にかかった文章は、牛の反芻のように読み直した司馬遼太郎の「歴史の中の邂逅」の一節だ。「まぼろしの古都、平泉」という一文だ。平泉は欧州藤原3代が作り上げた、金に輝く古都であった。金売り吉次が登場するこの時期、北上川河畔に大量の金がでた。この金の産出量のすごさがうわさとなり、ヨーロッパまで伝わり、マルコポーロがジパングを探して旅に出たのだ。
これだけの財力と17万騎と呼ばれた巨大な軍隊を奥州藤原氏は持っていたのにも係わらず:
なぜジンギス汗のごとく奥州藤原三代目秀衡はこの17万騎の精強をひきいて白川の関を南下し、源氏をつぶし、平家を追い、京を制して天下を得ようとしなかったのか。
「社会的な未熟さ」と司馬氏は言っている。歴史は社会意識の熟成の度合いにともなって発達するからだ、といっている。半分間違っており、半分正しいように思われる。
平泉は仙台の北側、清らかな山ふところにある。たいへん過ごしやすい土地である。夏は大阪のように(司馬氏の住まいのあったところだ)、夏、とてつもなく暑くて湿度の高くなることは、まれだ。大阪の8月の最高気温の平均は、33度ある。平泉ならおそらく27度程度だろう。大阪をはじめ、夏、太平洋側には「湿った、暑い空気」が太平洋から入り込む。東京も名古屋も静岡も近畿地方もこの湿った空気が居座るのである。
この湿った空気は平泉まではやってこない。朝夕はすがすがしく、昼の暑さも気持ちがいい程度だ。冬はその分寒い。雪が降る。しかし、寒さは火でしのげる。そして、雪は、なんといっても、たいへんに美しい。
さらに東北は食物の宝庫だ。関西で料理が発達したのは、新鮮な野菜、新鮮な魚が入ってこないから、手をかけなければ、食べられない。東北の食べ物は手を尽くして料理する必要がない。そのままでうまい。さらには、酒があり、女性は北方系の血をひく美人ぞろい。
白川の関を越える必要など、ぜんぜんない。白川の関より北こそ、桃源郷そのものなのだ。
と思うと、司馬氏の形而上的な考察より、私の形而下的な想像力の方にちょっと魅力を感じませんか?
■■■
まあ、いいや。先週末、いったいどこが自堕落・怠惰だったか、というと、また、床屋に行かなかったことだ。床屋は嫌いなのであるが、一般的な社会人として常識的な長さから、すでに逸脱しているのだが、「いやだ、いやだぁ、床屋になんか、行きたくなぁい」とウダウダしていたら、日曜日の夜になってしまった。という、情けない結末でした。ジャンジャン。