ジョンの命日に「LOVE」を聴いて考えた
日付としては12月8日ですが、日本では今日が、ジョン・レノンが亡くなった日です。前回のエントリーで書いた「ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実」は、明らかにポールよりの印象がありますが、その中にいくつかの興味深いエピソードが書かれていました。
ジョン・レノンはテクノロジー好きなのに、そのテクノロジー自体にはきわめて弱く、自分の考えることを具体的に伝えることがなかなかできないのです。そのため、非常に抽象的な言葉で、自分がほしいサウンドを表現していたようです。たとえば、「ダライ・ラマ・エフェクト」。
“Tomorrow Never Knows”で自分のボーカルサウンドを、「山のてっぺんから、ダライ・ラマがうたってるような感じ」にしてほしい、とプロデューサーのジョージ・マーティンに訴えます。それを実現するのはエンジニアのジェフ・エメリック。彼はレズリー・スピーカーにボーカルを通すという画期的なアイデアでジョンの要望に応えます。
ジョンは自分の生の声を嫌っていて、できるだけ加工されたサウンドにしたがったというのは既にいろいろなところで書かれている事実ですが、この本でも何度もそれが出てきます。ところが、ビートルズの最新リミックス版“LOVE”を聴いて、考えさせられました。
いろいろな曲のトラックを重ね合わせて1つの曲にする、というアイデア自体はおもしろいし、よく出来ているものもあります。しかし、気に入らないのは、ジョン・レノンのボーカルから、ジェフ・エメリックらが考えに考えたであろうレコーディングマジックがはぎ取られているというところです。できるだけ原音に近く、とか考えたのかもしれませんが、これは「ジョンは喜ばないだろうなあ」と考えたのでした。
音自体は非常にクリアになっており、これまで聴こえなかったメロディーが聞き取れます。できればほかの楽曲についてもデジタル用リミックスをしてほしいという欲求はマニアとしてありますけど。
ビートルズの各アルバムの原盤テープをそのままデジタル化したもの。2チャンネル、4チャンネル、8チャンネルのものが、いつか売られることはあるでしょうか? いくらくらいなら売ってくれるでしょうかね。こんな加工品を出すのなら、「生のビートルズ」も出してほしいものです。値段は高くてもいいから。
余談ですが、この本の訳者であり、そしていま出ているビートルズのCDの訳詞を担当している奥田氏とは、大学時代にビートルズのコピーバンドをやっていて、亡くなったとき、1980年の12月9日にはサークルの部室で練習をしていたのです。いきなり練習室のドアが開き、「ジョン・レノンが死んだぞ」と聞かされたときの衝撃。今もその日、その夜のことを考えると心が痛みます。
1986年、ストロベリーフィールドにて