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効率化に留まるAI活用の限界 全社目標に連動した評価体系の構築を

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ガートナーは2026年7月20日、財務リーダー204人を対象に2026年3月に実施した調査結果を発表しました。財務部門における人工知能(AI)活用が進む一方、その多くが個人の生産性向上やトランザクション処理の効率化に偏り、全社的な成長や意思決定の改善を重視する取締役会の期待との間にギャップが生じている実態が見えてきました。

Gartner Survey Shows 45% of CFOs Say Their AI Investments Lean Toward Productivity, While 20% Say These Investments Lean Toward Decision Quality

現場での作業効率化は一定の成果をもたらすものの、それだけでは事業全体の意思決定や競争優位性の拡大にはつながりにくい状態です。財務部門が全社的な価値創出へ貢献するためには、AI投資のポートフォリオを見直し、新たな評価基準を確立する必要があります。

今回は、財務AI投資が直面する効率化の限界、取締役会との間に存在する認識の違いや意思決定向上に向けたポートフォリオ再配置の進め方、そして、今後の展望について取り上げたいと思います。ChatGPT Image 2026年7月22日 07_42_49.jpg

生産性偏重が進む財務AI投資の現状

ガートナーが2026年7月20日に公表した調査データによると、2026年3月時点で財務リーダー204人のうち45%が、財務AI投資の目的を「生産性や効率性の向上」に傾斜させていると回答しました。一方で、「意思決定の質の向上」に投資を傾斜させていると答えた割合は20%にとどまっています。この数値は、多くの財務組織においてAIの導入目的が定型業務の自動化や事務負担の軽減に集中している現状を示しています。

個人の作業支援やトランザクション処理の迅速化は導入効果を初期段階で測定しやすいため、投資判断が下しやすい側面を持っています。しかし、投資の焦点が部門内の業務軽減ばかりに向かうことで、全社的な経営課題の解決や新たな事業価値創出に対するAIの活用が後回しになる構造が定着しつつあります。財務部門におけるAI活用の目的設定が、現状のままで事業全体の成長に十分な貢献を果たせるのかという懸念が生じています。

個別効率化の追求が直面する成果の平坦化

個人の作業時間を短縮することや定期的な処理を自動化することは、財務部門内のコスト削減や業務負担の軽減として視覚化しやすい特徴を持ちます。しかし、処理速度の向上や手作業の削減によるメリットは、一定の段階に達すると拡大が止まり平坦化する性質を有します。自動化された業務が全体の事業判断に変更を及ぼさない限り、財務機能そのものの役割が変わることは生じません。

特定の時間節減にとどまる取り組みは、部門内の部分最適で終わる可能性が高く、全社的な競争力の強化には直接つながりづらい側面があります。どれほど入力作業や帳票処理を高速化できたとしても、その余力がどのような経営判断に活用されているのかが示されなければ、投資対効果は頭打ちを迎えます。財務AIの導入において、既存業務の効率化のみを目的とすることの限界がどこにあるのかを把握することが求められます。

取締役会との間で生じる期待と評価のギャップ

ガートナーの財務プラクティスにおけるプリンシパルアナリスト、シャンカー・ケサブ(Shankar Keshav)氏によると、多くの財務責任者は生産性と効率性を重視した用途を優先している一方で、取締役会は成長の推進や意思決定の改善、競合優位性の獲得に貢献する投資を重要視していると指摘しています。財務責任者がAI活用の進展を報告しても、取締役会の側からは経営的な影響が不十分であると受け止められるギャップが存在します。

現場の努力によって削減された時間や処理件数の実績と、経営陣が求める全社的なインパクトとの間に評価軸の違いが存在するからです。優れた実行力で推進されたプロジェクトであっても、事業の成長や意思決定の質を高める成果に結びついていなければ、全社レベルでの評価を獲得することは困難になります。部門内の効率化実績と取締役会が要求する価値との乖離をいかに埋めるかが重要な焦点となります。

意思決定向上と価値創造への再バランス

ガートナーの調査結果によると、新たな価値提案や製品、市場を創出する「Upend(変革)」型のAI取り組みに投資した財務機能は、AIから高い価値を実現したと報告する割合が2倍以上高くなっていることが明らかになりました。財務責任者は、AI投資を限られた内部効率化の手段から、事業成長を支援する手段へ再配置する必要があります。

具体的な選択肢として、シナリオ分析の精度向上、潜在的な成長機会の検知、精度の高い意思決定支援など、経営の質を高める用途へのリソース配分を増やすことが挙げられます。また、データや分析モデル、知識資産などの再利用可能な要素を組織内に蓄積していくアプローチも有益です。個別の作業改善から事業全体の意思決定補強へと投資の重心を移行させることが、AI活用による全社的価値の創出を加速させるカギとなります。

評価基準の転換と再利用可能な資産の構築

財務AI投資の効果を最大化するためには、取り組みの評価基準自体を刷新することが不可欠となります。試行したプロジェクトの数や削減された作業時間といった定量指標のみに依存する従来の測定方法から脱却し、全社的な事業目標の達成にどう寄与したかを評価する指標へと組み替えることが求められます。

ケサブ氏が指摘するように、短期的な成果と長期的な戦略的価値の両方を視野に入れ、企業目標に直結した明確な指標を策定して共有することが重要です。事業環境や期待の変化に応じてポートフォリオを定期的に見直し、再調整する運用体制を整える姿勢が欠かせません。さらに、一度構築したデータや予測モデルを他部署や将来の施策でも活用できる共通資産として管理することで、継続的な投資対効果の高まりが期待されます。

今後の展望

今後の財務部門におけるAI導入は、個別の作業削減から組織全体の意思決定を補強する構造へと重心が移っていくと考えられます。データや予測モデルといった基盤の共通化が進むにつれ、全社的な成長機会の検知や柔軟なシナリオ分析が可能となり、財務組織の役割そのものが再構築される見込みです。

短期的な時間削減の集計から離れ、全社目標に直結する指標を用いて継続的にポートフォリオを再調整する管理手法が定着していくと想定されます。作業の高速化にとどまらず、分析精度や予測機能の強化を通じて経営判断の質を高め、変化する市場環境に対して先手を打つ姿勢が不可欠となるでしょう。

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