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エンタープライズWLAN市場は13.2%成長 Wi-Fi 7普及とAI活用で加速

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IDCは2025年9月11日、「Worldwide Quarterly WLAN Tracker」を発表し、2025年第2四半期の世界エンタープライズWLAN(無線LAN)市場が前年同期比13.2%増の26億ドルに達したことを明らかにしました。

Enterprise WLAN Market Grew 13.2% in the Second Quarter of 2025, according to IDC Worldwide WLAN Tracker

前四半期からの momentum を引き継ぎ、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7といった新しい無線規格の採用、さらにAIを活用したネットワーク管理機能の進展が需要を押し上げています。地域別には米国を中心としたアメリカ大陸が大幅な伸びを示した一方、中国市場は減速が目立ちました。

今回は、市場成長の背景、新規格の影響、地域ごとの差異、主要ベンダーの動向、そして今後の展望について取り上げたいと思います。

新規格が牽引する市場成長

市場の拡大を支えている最大の要因は、Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の普及です。6GHz帯を活用するこれらの規格は、従来比で最大3倍の帯域幅を提供可能とされ、企業ネットワークに新たなユースケースをもたらしています。

特にWi-Fi 7は2025年第2四半期に依存型アクセスポイント市場の21.2%を占め、前期の11.8%から急伸しました。Wi-Fi 6Eも26.8%を占めており、両規格を合わせると市場全体の約半分を構成する状況です。高速・低遅延・大容量を実現する新規格は、AIやクラウドアプリケーションの利用増大に不可欠な基盤となりつつあります。

地域別動向と中国市場の減速

地域別に見ると、アメリカ大陸の成長率が17.0%と際立ち、そのうち米国単独で18.4%増を記録しました。欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)も14.7%の成長を見せ、デジタル化への投資が継続しています。

一方でアジア太平洋地域は4.6%の伸びにとどまり、中国市場が6.6%の減少を記録したことが影響しました。中国では景気減速や設備投資抑制が背景にあり、グローバル市場の中で突出した停滞要因となっています。地域ごとの温度差は、今後の世界市場の成長を考えるうえで重要な視点となるでしょう。

ベンダー別シェアと競争構造

主要ベンダーの動向を見ると、Ciscoが8.0%増の9億9,610万ドルでシェア37.8%を維持し、依然として最大のプレーヤーです。

HPE Aruba Networkingは9.3%増の3億7,630万ドルでシェア14.3%を確保しました。最も高い成長を遂げたのはUbiquitiで、前年同期比66.8%増の3億1,240万ドルとなり、シェア11.9%に拡大しています。Huaweiは5.4%増にとどまり、米中対立の影響を受ける構造が続いています。

さらに注目されるのは、HPEが2025年7月に完了したJuniper Networksの買収です。Juniperは20.4%増の1億4,190万ドルを計上しており、HPEグループ全体の市場地位強化につながる可能性があります。

ベンダー間の勢力図は、新規格対応やAI活用のスピードによって今後さらに変化するでしょう。

AIによるネットワーク管理の進化

新しいWi-Fi規格に加え、AIを活用したネットワーク管理の高度化も市場成長を後押ししています。AIはトラフィック分析、障害予兆検知、動的なリソース最適化に利用され、従来は熟練エンジニアに依存していた管理作業を自動化しつつあります。

IDCのBrandon Butler氏は「Wi-Fi 7やWi-Fi 6Eが新しいユースケースを拡大し、AIが革新的な管理機能を可能にしている」と指摘しました。今後、AIによるネットワークの自己修復機能やユーザー体験の最適化が進むことで、WLANは企業DXの基盤インフラとしての役割を一層強めていくと見込まれます。

今後の展望

エンタープライズWLAN市場は、引き続き二桁成長を維持する可能性があります。Wi-Fi 7の普及拡大やAI管理機能の浸透は、オフィス、工場、教育機関など幅広い分野で新たな需要を生み出す可能性があるでしょう。

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出典:IDC 2025.9

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