Apple製品を真っ先に解剖してくれるiFixitって、どんな会社?
魅力的な新製品をどこよりも早く購入して分解リポートを出してくれるiFixit。少しでも早く解剖するために朝が一番先に来るオーストラリアでマシンを買う熱意(iFixitはカリフォルニア州にあります)と、解説からにじむ「俺たち楽しんでるんだもん」な空気が素敵です。私は2009年にその存在を知ったんですが、創業は2003年。
創業者で今もCEOを務めるカイル・ウィーンズ氏が学生のころ、買ったばかりのiBook(当時1800ドル)が壊れてしまい、自分で修理しようとして苦労したのが会社の始まりだそうです。下は公式なウィーンズCEOの画像。かっちょいい。
このエピソードはMotherboardの11月24日付の記事で読んだんですが、この記事を読んだらこの会社への尊敬の念がますます強まりました。
iBookの修理のために情報をネットで探したウィーンズ氏は、修理マニュアルを公開したWebサイトをAppleがDMCA違反で提訴していることを知ります。「それってとんでもなくだめじゃん」と思ったそうです。
そこで彼は、自分が苦労したiBook(とPowerBook)の修理ノウハウをマニュアルにまとめて、15ドルで売ってみました。これはあまり売れなかったんだけど、オンラインで無償公開したらMac関連ブログメディアなどで紹介され、認知されました。
それからは、AppleがApple以外で製品を修理できないようにiPhone 4のネジ頭を"pentalobe"にしたら真っ先に対応するドライバーを作ったり(Apple以外で誕生した世界初のpentaobeドライバーだとウィーンズ氏)、修理マニュアルコーナーを充実させつつ、解剖リポートも掲載して今日にいたっています(下は最近のiPad Proの分解図です)。
ウィーンズ氏は修理で儲けようというのではなく、自分の持ち物はスマートフォンだろうがなんだろうが、自分で修理して長く使うべき、という基本思想に基いてiFixitを経営しています。使わなくなったスマートフォンを放棄したり、リサイクルに出すのはあんまりよくない(プラスティックなどの再利用はあまり効果的にはできない)ので、修理して使うか、使いたい人に売るべきだと。
なんというか、「修理の自由を民の手に」運動というか。
ウィーンズ氏はWiredにも何度か寄稿し、(Appleに限らず)最近の製品をユーザーが自分で修理できない現状について問題提起しています。
iFixitは今のところ黒字で、最近新しいオフィスに引っ越しました。これが、元カーディーラーで、がらんとしたスペースを自分たちでカスタマイズしている最中なんだって。すごく楽しそう。
この記事を書いたジェイソン・コブラー記者が、もしAppleが(心変わりして)ユーザーに自分で端末を修理する方法を教えたり、公式の部品を販売しだしたら(商売あがったりになると思うけど)どうする? と尋ねるとウィーンズ氏は「iFixitはハックなんだ。本来はメーカーがやらなくちゃいけないことだよ」と答えました。
これは本音だと思うし、それが実現してもユーザーは自分じゃ修理できないからiFixitはますます繁盛するんじゃないかな。
そうなったとしても、これからも新製品分解リポートを出し続けてくれますように。iFixitは画像を2枚までなら載せて記事にしていいよ、って言ってくれてるので、これからもアイティメディアで紹介させてもらいます~。