「モダンエルダー」──50代で読んでおくべき本(若き経営者もぜひ)
「モダンエルダー」という気になるタイトルの書籍が出ます。エルダーとは「年長者」あるいは「お年寄り」という意味。私はどちらかというと後者としてこの言葉を把握していたので、「あ、私のようなお年寄りのための本か?」と思いました。でもそこに「モダン」(現代的な)が付いているので、なんか、お年寄りが元気になれる話かも、と。
結論から言うと、そのとおりでもあり、ちょっと違うものでもありました。「モダンエルダー」とは、50代になっても好奇心を失わず、柔軟な姿勢と経験から得た知恵を兼ね備えた年長者。幹部も含めて平均年齢が低い新興企業では、そんなモダンエルダーが活躍できるのだ! というわけで、私にはまったく当てはまりませんでしたが、普通のエルダーがモダンエルダーになるためのヒントが書かれています。
モダンエルダーは、イメージとしては映画「マイ・インターン」(2015年公開)のロバート・デニーロのような感じ。若く有能なCEOのジュールズ(アン・ハサウェイ)率いる若者ばかりの新興企業にシニアインターンとして70歳にして参加したベン(デニーロ)。ITについてはまったく分からないので若者にいろいろ教えてもらいながら、EQ(心の知能指数)面でのサポートを惜しみなく与えて、会社のチームと信頼関係を作って貢献していく話です。
「モダンエルダー」の著者、チップ・コンリーさんはもっと若い50代前半で、若く有能で謙虚なブライアン・チェスキーCEO率いる民泊の新興企業Airbnbにアドバイザーとして入社しました。
コンリーさんは1986年に20代で斬新なブティックホテル企業を立ち上げて成功を収めた起業家。当時はホテル業界に新風を巻き起こした彼も50代になって病気をしたりしたこともあり、2010年に大事な我が子(企業)を売却し、次を模索していたところ、2013年にチェスキーCEOに請われて入社。
チェスキーさんはこの本のまえがきを書いていて、コンリーさんに声をかけたのは、彼がホテルのホスピタリティのプロだと知ったからだと言ってます。それに応じて若者ばかりの会社に飛び込んだコンリーさんもすごいですが、声をかけたチェスキーさんも偉いですよね。彼は「チップは皆さんに、知恵は年齢とは関係なく、取り組む姿勢がすべてだと身をもって見せてくれるだろう」と書いています。
内容はチェスキーCEOが言うとおり、コンリーさんがAirbnbで実践して成果を上げたモダンエルダーとしての取り組みを、具体例で説明してくれます。自分のケースだけでなく、他のモダンエルダーたちのエピソードも盛りだくさん。
ちょっと分厚い本ですが、まずはモダンエルダーそのものの外村仁さんの解説で全体像を掴んでからだと読みやすいです(全体像をうまく掴むのもモダンエルダーのスキルの1つ)。
人生100年時代では、50代はまだ後半に入ったばかり。引退を考えるより、キャリアの立て直しを考えるべき時期でしょう。そんな地点にいる人にお勧めです。
また、若い幹部たちにもお勧めです。身近にいるモダンエルダー候補へのアプローチのヒントが書いてあるからです。20歳も年上だと煙たいかもしれませんが、その経験や知恵に触れないのはもったいないです。何ならモダンエルダーになれそうな同僚にこの本を贈ったらどうでしょう。それを喜ぶ相手なら、大いに可能性がありそうです。