消費者が読むのは危険かも──「アップル 驚異のエクスペリエンス」
日経BPのベストセラー、「驚異の」シリーズの3冊目「アップル 驚異のエクスペリエンス」を読了しました。
ジョブズのプレゼンのヒミツを解き明かした1冊目、ジョブズの考え方を紹介した2冊目は、結局ジョブズにしかできないことなので感心はしても仕事にどこまで活かせるんだろうかと思うんですけど、3冊目はアップルストアについてなので、接客業の人の参考になりそうです。実際、iPhoneを最初に米国で販売したAT&Tは、ジョブズのアドバイスに従った結果、顧客体験を大幅に改善したそうです。
でもこれは、お客側の人間が読むのは危険だと思いましたよ。だって、今まで当たり前だと思っていたサービス業の応対に「えー、アップルストアだったらこんなじゃないのに」といちいち思うようになっちゃいました。逆に言えば、サービス業の人、特にビジョンを持たなくちゃいけない立場の人は必読ということになるかと。
この本によると、アップルストアが従業員として採用するのは、MacやiPhoneの知識がある人ではなく、人として魅力のある人、人にサービスすることを喜べる人。だから、普通のサービス業なら「それはうちの仕事じゃない」と思うようなことでも、お客の「アップル体験」を良いものにするためならできるだけのことをするのだそうです。そのための手段は従業員のそれぞれの裁量に任されていて、また、報酬が歩合制ではないので、従業員はアップル体験向上に集中できます。
この本ではそうした例をいろいろ紹介しているので、ついつい自分の体験とくらべてしまうのです。
例えば先日、うち(築19年の分譲マンション)の換気扇がついに修理しなくちゃならなくなったんですが、メーカー名が見えるところに表示されていなかったんで管理会社に電話したんです。そしたら「うちは途中から管理を依頼されたんで、設備の詳細は知りません」と当然のように言うのです。以前だったら、「そうですよねぇ、自分で調べます」と電話を切っておしまいでしたが、なんだか不満に思うようになっちゃいました。アップルストアの人だったら、「すみません、そうした記録がないのですが、できれば今後のために教えてもらえませんか?」と言うかもなぁ、なんて。
ところで、実は私はお店で応接してもらうのが苦手です。アドバイスが必要なときは、こちらから声をかけるので、それまでは好きにさせてほしいタイプ。だから、アップルストアが開店した当初、「アップルストアはフレンドリーで店員が大歓迎してくれる」と聞いたので「やだなー」と思ったんです。
でも杞憂でした。多分、私が全身から「LEAVE ME ALONE」オーラを発しているからでしょう。アップルストアに足を踏み入れても大抵誰も寄って来ません。でも無視しているわけじゃないんです。目を上げると、すぐに青いシャツの誰かしらと目が合うので。相手によって対応を考えてるんだろうなぁと感心するところです。