英語の授業よりつらかったsmall talk(雑談)
帰国子女ではないので留学時に英語で苦労をした。
それでも、かくたる目的をもって話さなければいけない授業は、なんとか意図することを伝えようと努力もするし、
思いもかけないことだったが、たわいもない会話が一番ハードルが高かった。
「帰国子女ではない」という言葉には、「英語が上手くない」ではなく、「western styleにおける文化を理解していない・楽しみきれていない」という意味だったのだなぁ。。
***********全体会議の話から*******************
ビジネススクールに留学したと言うと、「授業がつらかったでしょう?」とよく聞かれますが、大変ではありましたが、つらくはありませんでした。
つらかったのは、むしろ授業が始まる前です。
日本だったら、「おはよう!」「おはよう!」で完結する会話が、「Good morning! How are you?」と質問されます。
「Fine, thank you. And you?」と答えるまではよいのですが、「Pretty fine! How was your weekend?」とまた質問されます。
「えっ、週末何したんだっけ?えっと土曜日は、お昼近くに起きて、それからブランチに行って・・・」などと思い出しながら、下手な英語で要領悪くもたもた答えていると、「Well, it was nice catching up with you. But unfortunately I have to get going....」のようなことがおこり、会話が途中で終わってしまいます。
当時の私は、何人ものクラスメートが月曜日になるとこうやって週末のことを聞くので、「何か週末には答えに値するspecialなことをしなきゃ」くらいに思っていました。
いやはや、当時の私は、全然わかってませんでしたね。
大事なのは答えではなく、私が「How was your weekend?」と聞きかえすことだったのだと、今ならわかります。
どの国も、その文化を反映させた会話が行われるわけですが、多くの西欧諸国では、こういうsmall talk(雑談)を重ねることで、「私はあなたの仲間になりたいです。質問をすることで、親愛の情を示しているのです」とメッセージを送ります。
あえて言えば、別に私が週末に何をしているのかに興味があるわけではありません(苦笑)
だから、私も、自分が何をしたのか下手な英語でくどくど説明するより、「私もあなたを仲間だと思っています。だから私も親愛の情を示して、お尋ねします。How was your weekend?」と言うべきだったわけです。
日本ではこういう類の質問をしあう礼儀作法はあまりないと思いますが(いい天気ですねぇ、いい天気ですねぇという共感型が多い)、相手に親愛の情を示すことが、ビジネスを円滑に進めるためにも重要なのは間違いありません。
それではビジネスにおける親愛の情の表し方はなんでしょう?
私は「相手がどういう仕事をしているのか、興味をもつこと」だと思うのです。
私たちはお客様から翻訳やWEBの制作や派遣サービスのお問い合わせを受けるわけですが、具体的にいただいている仕事だけでなく、仕事をくださる方がどういう仕事をなさっているかにも興味を持ってください。
例えば私たちは、制作を行う上で、利用目的を聞きますよね?
目的をお伺いすることは、満足度の高い制作物を作る上で必要なことはもちろんですが、この質問はお客様の仕事の真髄にもかかわることなので、私たちの信愛の情を示すことも出来ます。
二つの意味で、是非、お客様に仕事の中味や、制作物を作る目的を聞いてください。
もっともこれは、礼儀の意味だけではありませんので、週末に何をしているのかと違って、相手の答えを理解することはとても大事です。
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とある英語ネイティブにこの話をしたら「small talkをするために、週末ごとにspecialなことをしていたのなら、かなり色々なことが出来たんじゃない?」と笑われながらも「この手のsmall talkはアジアでも盛んなのかと思っていた。英語を教える立場として、その文化の差を意識したことはなかったなぁ。」と、感謝された。