Planned Happenstance(計画的偶発性)理論
「キャリアのゴールを自分で決め、そのためにプランをたて、実行する」というのが、従来主流のアメリカ型キャリアカウンセリングであった。
この手法だとキャリアゴールを自分で決められない人は、はじめから躓いてしまう。「好きなものを見つける」「消去法で考えよ」などとアドバイスされても、そう簡単にあまたある選択肢から決められるものではない。だが、そのような優柔不断さは、よくないとされてしまう。
私自身も、入社2年目に衝撃的な「気づき」があった。
人事考課で上司に査定されている時に、「大里さんはどういう仕事をしたいの?」と聞かれ、「私は好き嫌いがないので、何でもやります」と自分としては模範解答を出した気でいた。
すると、「そうか、大里さんは何でもよいのか。だったら、僕は誰もがやりたがらない一番つまらない仕事を君にあげよう」とにっこり笑って言ったのだ。
上司のありがたい愛のムチであった。
その時、私は初めて、仕事というのはポケ~っと口をあけて待っているのではなく、自分で選びとらなければいけないことを学んだのだ。
キャリアの浅い時点で、気づかせてもらったのはたいそうありがたかった。
しかし、当時の能力では、私にどのようなキャリアの選択肢があるのか、調べ考えるすべを知らなかった。
だから、たまたま研修でネットワークを習い、「将来はネットワーク関連、それも出来たら○○○に詳しいエンジニアになりたいです」などと、しかたがないのでそれらしい希望を無理やり作り出していた。(ちなみに○○○は今や存在しない)
このPlanned Happenstance理論(計画的偶発性理論)というのはスタンフォード大学のクランボルツ教授らによって提唱されているキャリア理論だ。
キャリアは偶然の積み重ねで形成される。よって、予期せぬ出来事をいかにチャンスに結び付けるかを重要だと考える。ある意味、ゴールを決めないことをよしとする考え方である。
それではどのようにして予期せぬ出来事をチャンスに変えるのか?5つのファクター(スキル)が重要だそうだ。
Curiosity:好奇心
Persistence:持続性
Flexibility:柔軟性
Optimism:楽観性
Risk Take:行動に移すこと(と私は意訳したい)
比較的最近の理論(1999)だし、それほど日本でポピュラーでもない。
もう少し踏み込んで発言すれば、古きよき日本の会社では、あたりまえのようにPlanned Happenstanceで行われていて、そのアンチテーゼとしてのキャリア開発理論が花盛りのような気もする。
しかし、例えば外資系の会社で働いていて、従来のアメリカ型キャリア開発に息苦しさを感じた時は、このような考え方もあると知っておくのは大変有意義だと思う。
私自身は、まさしくPlanned Happenstanceでここまで来たなぁという気持ちだ。
ちなみに「ネットワークに興味がある」と言ったにもかかわらず、その後すぐさま、データベース関連のアプリケーション開発のプロジェクトに入れられた。そこで、私は実はネットワークに実は興味がなかったのか(つまりこのプロジェクトがいかに楽しいか)に気がついたのであった。(そしてその時の人脈は今でもつながっている)
上司が私の適性を見越してこのプロジェクトを選んだのか、単なる偶然だったのかは知る由もないが。(そしてそれからもPlanned Happenstanceの連続なのだがそれはまた別の機会に書けたらよいなぁ)