翻訳発注ルール5:急ぎの時ほど期待してる品質レベルを伝える
「とにかく急いでいるんです!品質は目をつぶりますから出来るだけ早く!」という依頼を受けることがままある。スピードが求められる時代、担当者の気持ちはよくわかるのだが、品質がどうでもよいわけでないことも、私たち翻訳会社は痛いほどよくわかっている。
なぜなら、急ぎのものほど重要で、実は品質を求めていることが多いから。(重要でなければ翻訳をせずに済ませてしまうはず)
「急遽アメリカからクライアントが来るので資料を翻訳しなければならない」
「M&A案件の決済を社長に仰がなければいけない」
などなど。
しかし、短納期で通常納期より高品質の翻訳は不可能な話だ。翻訳会社として、「そんな短納期では出来ません」とお断りするのは実は簡単でリスクをとらなくてよいので楽なのだが、それではクライアントは困ってしまう。
現実的な対応策は何だろうか。やはり、当たり前ながら、全体の翻訳ボリュームを減らすことだ。それ以外に出来ることと言えば
①まず見た目の美しさをあきらめること
特にパワーポイントのレイアウトなど時間がかかるものは「字が読めればよい」と割り切る
②小物を訳さない
図や表の翻訳は意外に時間がかかる。翻訳しないのもひとつの手。
③ばらつきをおさえることを諦める
急ぎなので複数の翻訳家に分けて翻訳せざるを得ない。翻訳家間のばらつきには目をつむってしまう
④絶対譲れない線を決める
数字の間違いだけは避けるように二重チェックするなど
⑤原文も念のために用意し、もしもの時の対応を考える
二重チェックをする暇もないほど急ぎの翻訳の場合、訳の抜け漏れがある可能性もある
難しいことはわかっていても、翻訳会社としては「急いで翻訳しなければならないような状況にそもそもしない」ということをお願いしたい。たった1日納期が延びるだけで、出来るチェックの手段は格段に広がり、品質はぐっと上がるのだから。
注記:このエントリーは当社発行小冊子「翻訳品質を上げる7つのルール」の補足として書いています。小冊子に興味がある方はこちらからお求め下さい。
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