翻訳発注ルール4:仕上がりに影響を与える翻訳以外の品質要素を考える
品質トラブルと聞くと、皆さんは翻訳の品質(誤訳の有無、訳文のこなれかた)をまっさきに思い浮かべるかと思う。しかし、実際に顧客をがっかりさせることは、翻訳品質そのものより、圧倒的に見た目のきれいさの方が多い。
最近は、ワード・エクセル・パワーポイントなどで、緻密に作られた資料の翻訳が多い。なかなかの曲者だ。
特に英訳の場合は要注意。日本語2文字の熟語で書かれていても、英語にするととっても長くなり、図などに収まりきれないことはよくある。
翻訳会社のいう翻訳とは通常、原文の文字の上に訳文を上書きすることを意味する。つまり、レイアウト整形を要求される作業は含まれておらず、そういう場合は有料で行うのが通常だ。
しかしながら、翻訳を頼みなれないクライアントがその違いを理解するのは難しい。例えばワードで作られた非常に簡単な資料なら、上書きするだけで十分クライアントのニーズを満たすであろう。しかし、作図機能が使われていたり、エクセルの表が貼り付けられていたりすると、そのまま上書き翻訳をしても、訳文が全部表示されないなどの不都合が起こりやすい。
もっともトラブルの元になるのがパワーポイントで精密に作られた図表の英訳だ。
たとえお金をいただいてレイアウト整形作業を行っても、訳語がテキストボックスに収まりきれなかったり、無理に収めるためにフォントが読めないほど小さくなったり。
画像や別のファイルの貼り付けた資料も多いので、そもそもテキストで上書きなど出来ないことも多い。
そして、それらの整形作業が実は、翻訳代より高かったり、納期が長くかかったりするものだから、クライアントの満足度を満たすのはなかなか難しい。
コストパフォーマンスを求めるのなら、レイアウトに関する品質基準を緩めるに限ると個人的には思う。
注記:このエントリーは当社発行小冊子「翻訳品質を上げる7つのルール」の補足として書いています。小冊子に興味がある方はこちらからお求め下さい。
http://www.arc-c.jp/present1/index.html