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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

【フリーランス考3】 実際のところ、儲かるの? 儲からないの?

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フリーランスはお金に関して、サラリーマンとは全く異なるシステムによって動いている。フリーランスというとまっさきに想起されるのが"不安定な職業"というイメージであるが、果たしてその理由は何処に? 今回は気になるお金の話・・・。

月収100万円も可能なワンダフルワールド!

【働いた分だけ報酬が増える】という労働体系、これがフリーランスとサラリーマンの決定的な違いである。サラリーマンの場合、給料が劇的に増えることはあまりない。昇進して地道に上がるのがじれったいなら、条件の良い企業に転職して一気に上げるしか方法はないだろう。

組織とは、多くの社員を"公平に幸せに"するために機能する。抜群に優秀な社員が"個人の力"で大きな成果を残したとしても、その成果がそのまま彼の給料にダイレクトに反映されるわけではない。内部留保、設備投資、社員教育・・・彼がもたらした利益は次なる会社の発展のために、再投資されるからだ。

使えない人間がいるのも組織の宿命、優秀な社員や頑張っている人が彼らの分まで働かされたのではたまったものではない。そこで働いた分だけ増える報酬として残業代があり、良い仕事をした人にはインセンティブがある。ただしサービス残業が増えているように、それらは個人の努力を"完全に反映した金額"ではない。

対してフリーランスは働いた分の報酬を"正確に受け取る権利"を持っている。仮にひとつの仕事の単価を5万円としよう。一カ月にこの業務を5件受託すれば25万円、10件なら50万円、20件なら100万円が一カ月の報酬となる。フリーランスの報酬に上限はない。

月収0円もあり得る悲惨な世界・・・

働いた分だけ増えるを裏返せば【働かなければ1円も入ってこない】のも、フリーランスの特徴。上限がない代わりに下限もない。

先月は100万円稼いだのに、今月は0円という事態も十分に起こり得る。前回、フリーライターは語感の響きからフリーターに勘違いされるケースもしばしあると書いたが、実はフリーランスはフリーターの報酬体系にかなり似ている。働かなければ収入ゼロという点に置いて・・・。

サラリーマンは首にならない限り、こうした状況には陥らない。まったく仕事をしない・仕事がデキナイけど、会社にはマジメに毎日通う社員がいるとする。PCでゲームをしたりオシャベリして日々をやりすごすため、すこぶる社内の評判が悪く、勤務評定も最悪、それでも彼は月給はゲットできる。

フリーランスが不安定という世間のイメージはある意味で正しい。好きな仕事に専門特化し、自分なりの生活サイクルを築ける夢のような暮らし? の代償として、お金に関しては相当にリスキーであるのがフリーランスの現実なのだ。

デメリットいろいろ

勤務中にケガをした場合、サラリーマンには労災がおりるがフリーランスにそのようなものはなく、自腹で病院に通わねばならない。労災はバイトやパートといった不安定な立場の人々をもその対象としている一方で、フリーランスは企業に雇用されていない、つまりは労働者とはみなされないため、すべてが自己の責任、自己の負担となる。

ではケガにより働くことができなくなり、収入が途絶えてしまったとしよう。サラリーマンは休業補償によりお金をもらうことができるが、フリーランスはもらえない。こうなると最悪である。働かねば収入が入ってこず、仕事中のケガで働けなくなっても、そこに同情の余地はないのが、基本スタンスである。

ケガなどでなく、本格的に仕事がなくなった場合の話もしておこう。倒産あるいは自己都合などでサラリーマンをいったんやめると、その時点から彼らは失業者と呼ばれる。しかし安心、条件を満たせば一定期間の失業保険が給付され、当面のお金は困らない仕組みができている。

フリーランスは完全に仕事がなくなっても、どこからもお金は支給されない。

細かな話をすると、経費もすべて自腹である。交通費、接待費、備品・・・サラリーマンが通常支給される類のお金は、自分のお財布から支払う。仕事がらみで友人と食事をして領収書をもらうと、「いいなあ、こんな食事も経費で落ちるのか」と言われる。どうやら払ったお金が"どこかから戻ってくる"と思い込んでいるのだが、それは大きな勘違いである。

サラリーマンなら領収書を総務に持っていけばお金は返ってくるが、フリーランスは返ってこない。売り上げからその金額が控除されるという意味があるだけで、返してくれる人はどこにもいない。なぜなら、自分が小さな経営者でもあるのだから。それゆえに経費は慎重に使う。コストパフォーマンスを考えて。

お金の心配は将来にも及ぶ。フリーランスは老後に頼るべく「企業年金」がなく、定年もないのでまとまった「退職金」もなく、自分で何とかしておかないといけない。まったくアテにならない、支給すら危ぶまれる"詐欺のような国民年金"がベースとは、何とも心許ない限りであるが・・・。

フリーランスは"生き方そのもの"である

以前、とある芸能人がこのようなことを言っていた。

「役者は人気商売ですから・・・。仕事がないという状況が基本の心構え、役者は"潜在的な失業者"ですよ。」

これはフリーランスも一緒、常に仕事はゼロベースを想定しながら、いかに効率よくスケジュールを組み、いかに仕事を増やしていくかという発想が重要となる。会社に行けば何らかの仕事が"待っている"のではなく、仕事は自ら"作り出す"ものという考えが根底になければ務まらない。

相当にデンジャラスではないか! と、サラリーマンの人は考えるだろう。その通り、かなり危ない働き方なのは間違いない。フリーランスからインハウスへ移る人もいるし、バイトしないと生活ができない人もいる。

シンプルに"労働は生活のため"と捉えるなら、サラリーマンの方が好ましい。企業に在籍することで身分や肩書が保証されているし、多額の予算を確保してスケールの大きな仕事ができるのは、やはりサラリーマンの強みである。個人にはとうていかなわない。

それでもフリーランスを選択する人は、やはりフリーという生き方が好きなのだろう。私自身もそうだ。稼ぐときはけっこう稼ぐし、その反対に稼げないときはあまり稼げない。稼いでいるときはバンバン使い、そうでないときは急に倹約家に転じる。まるで芸能人のよう、しかしそれで構わない。

報酬はいかに積み上げる?

一般的なケースで言うとフリーランスは"単発の仕事"が多く、それらをいくつも同時進行的にこなして一カ月の報酬を確保し、これを積み上げて1年間の売り上げを達成する。単価はやや低めと思われる。

これに対して私のビジネスコンサルティングという仕事は、プロモーション、社員教育、新規ビジネスのプランニングなど多岐に渡るため、最低でも1回の仕事に対して1年は必要である。単価はやや高めであり、契約も長期に渡る。

単価を下げて数をこなすか、単価を上げて数を絞るか・・・。仕事が千差万別なら稼ぎ方・戦略にも個人差が大きく現れる。そしてフリーランスが働く業界によって報酬にまつわる様々な慣習があり、むしろこちらの方が稼ぎ方に与える影響は大きい。

そして稼ぎ方につながるのが、お金に対する価値観。最近、私はこう考える。「お金のためだけでなく"面白くて意味のある仕事"、それが一番大事・・・」。フリーランスとして独立した当初は、やはり身入りのよい仕事を優先した。しかし人生の折り返しである30代も半ばを過ぎた頃から、自然と考えが変わってきた。

「誰か他の人ができる仕事は、私がやらなくてもよい」

「長く付き合える信頼できる経営者・企業としか、付き合わない」

報酬に上限もなく下限もないフリーランスは、儲けようと思えば儲けられる可能性があり、いろんな人がいろんな風に考えながら働いている。私としては"仕事の先"が見えないから面白いのがフリーランス。"お金の先"はもう少し見えてもいいのだが・・・。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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