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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

有名ラーメン店にて・・・地獄を見る。

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1年ほど前、とあるコッテリ系ラーメンで有名なお店の前を偶然に通りかかり、誘われるように行列の最後尾に並んだことがあった。昔から一度は食べてみたかったお店だった。夜、行列が進むにつれ、明るい店内で一心不乱にラーメンをほおばる人々の恍惚の表情を眺めながら、生唾をごくりと飲み込んだのだが・・・。

大盛りにて失敗する

ようやく入店。知人から「あそこはみんな大盛り頼んでいるよ」と、事前に聞いていた。また実際、ほとんどの人が大盛りを注文をしているので、私は迷わずに大盛りを頼んだ。

さすがはコッテリ系の人気店。もうもうと立ち上がる湯気までがどんより濃厚、肘をついたテーブルは若干ベタついており、店内が異様なまでに脂ぎっている。食べている客も同様に脂ぎっている。曇ったメガネを気にすることもなく、黙々と食べている。

コッテリ系が大好きな私にとってはベストな雰囲気だった。それにしても・・・周囲を見回し、尋常でない大盛りのボリュームに驚愕する。巨大などんぶりの上にどっさり、はみださんばかりである。たまらん。

眉間にしわを寄せた怖そうな大将が、私の前に大盛りを置く。いやあ、楽しみ。私が初めてラーメンを食べるときのクセは、最初に臭いを嗅いでみること。別に臭いで美味い・不味いが判断できるわけではないが、何となくそうしている。そして、臭いを嗅ぎ、何だか嫌な予感がした。実際は、最初に一口すすったスープで判断できる。

え?・・・これ、マズイ・・・。

私はスープを一口飲み、あまりの不味さに愕然とした。戦慄した。ラーメンは個人の嗜好がハッキリと分かれる食べ物である。コッテリ系が好きとか魚介のあっさり系が好きとか、つけ麺ばかりを食べるものもいるし、相当に好みが分かれる。

あっさり系で大絶賛されている有名店でも、コッテリ系はそのラーメンを不味いと感じるなんてことはしょっちゅうある。美味い・不味いという判断は、ラーメンの場合は特に"個人の味覚"に頼るところが大きい。

私は基本、コッテリ系。ここもコッテリ系。同じ流派内でも、当然ながら好き嫌いは分かれることは往々にしてあるが、一口すすってシンプルに"不味い!"という想いを抱くことは稀である。この味はあまり好きでないというレベルならいいのだが、本当に不味い、食べたくないシロモノだった。

参った。地獄だ。目の前には超大盛りラーメン。ここから私の苦闘が始まった・・・。

帰ってもいいですか?

これが普通のラーメン店であるなら、そのままお店を出ることには躊躇いもない。しかし、ここは超がつくほどの有名店。一口スープをすすっただけでお店を後にするなど、とてもではないが許される雰囲気ではない。

怖そうな大将は、自分が作ったこだわりの一杯に貪りつくラーメンフリーク=信者の食べっぷりをじっと観察している。うん、今日もみんな、俺の味にヤラれているな、とでも言わんばかりの自信たっぷりの表情だ。信者たちは無我夢中、オシャベリすることもなくがっついている。そこには大将と客の"無言の一体感"があった。独特の流儀が店内を支配していた。まさかこの状況で退席するなど、考えられない・・・。

私は麺を食べてみた。やっぱり・・・。スープで判断した味覚は間違っていなかった。不味いというよりは、味がない。スープと麺がまったく調和しておらず、せめて麺だけでも食べて"食べた形跡"を残そうと思ったのだが、コッテリ系だけにスープがしっかりと麺にからんでしまっており、箸がまったく進まない。

私は天井を仰いだ。周囲の客は猛スピードで食べていくため、みるみるどんぶりの中身が消えていく。一方、私の目の前には、ほぼ手つかずのまま置かれたラーメン・・・。隣の客が私の様子を横目でちらりとみやる。「何でコイツ、こんな美味いラーメン食べないの?」。そんな視線である。私からすれば、よくこんな不味いラーメン食べれるねという気持ちでいっぱいなのだが、ここは完全にアウェー状態。

ふと、視線に気づく。動きが止まったままの不審人物である私を、大将がしきりに気にし始めたのだ。鍋をふっては私をチラリ、威勢のいい声で注文をさばいてはまたチラリ、完全に密着マークで狙われていた。有名店すべてが美味いわけではないことは当然知っている。しかし、これほど食べ進められないとは・・・。

作戦その1―スープの下に麺を押し込んで隠す

まずは大盛りの野菜トッピングを処理することにした。これが目立ってしょうがない。我慢して食べる。放り込む。苦痛。なぜラーメン店でこんな苦行をせねばならんのだ! などと、大盛りを頼んだ浅はかさを後悔しながら食べていくのだが、いっこうに減らない。どんだけ盛ってんだ? 食べても食べても麺が見えてこない。

ようやく麺が見えてきても、まだスープの上から数センチははみ出している。ここまできて、ようやく普通のお店の大盛りに辿り着いたような塩梅。しかも、ここからが本番。食べるのが遅すぎるため麺がのびはじめ、スープが減り始めている。早くせねば、私の作戦が遂行できない! マシーンになったつもりで麺を無理やり食べていく。ああ、不味い。

食べても食べても減らないラーメン。何とエコなラーメン。猛スピードで完食した信者たちは、どんどん満足げな表情で店を去っていき、入れ替わりに空腹でたまらんといった新たな信者がやってくる。私は給食で取り残された、惨めな小学生の気分。

ためしにレンゲで麺をスープの下に押し込んでみた。もしかしたら隠れるかも・・・。そんなわけはない。ギュギュっと力を入れて押し込んでも、やはり効果はない。せめてスープの下に隠れてくれれば。

作戦その2―スープを水で増やして増量する

もう無理だ! 私はとある妙案を思いついた。どんぶりに水を入れ、麺を隠してしまおう。それほど不味いラーメンに追い詰められていた。スープに水をたんまり入れて増量する=麺が隠れる=完食したように見える=お家に帰れる・・・。

私はどんぶりのそばに水の入ったコップを持っていき、注ぎ入れる準備をした。いざ実行しようとなると、無理だった。大将の密着マークはさらに厳しくなっており、先ほどから麺をギュギュっと押し込んだりしている私の奇妙な動作に、若干イラついてる気配さえ漂う。きっと私の目は涙目に違いない。

有名店が醸す独特の雰囲気は、時に、残酷である。どんぶりには、山のように盛られたラーメンが・・・。

うう・・・吐き気がしてきた。ヘルプ・ミー!

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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