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NTTデータのPITONはレガシーな資産を温存する第2のRPAでは無いのか?

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NTTデータがメインフレーム上の勘定系システムをLinuxなどのオープン系システムにそのまま移行させるための独自ミドルウェア「PITON(ピトン)」を発表しました。

NTTデータが勘定系オープン化に「くさび」、地銀顧客をつなぎとめられるか

日立や富士通など、国産ベンダーがメインフレームからの撤退を表明する中、今後選択肢はIBMただ1社となって行きます。それによって顧客が流出するのを防ぐ為に「くさび(PITON)」を打ち込む、というものです。オープン系への移行というと、クラウドも視野に入るのではないかと期待してしまいますが、今回の発表ではそのへんは明記されていません。恐らくレイテンシーなどの問題もあるため、移行はクラウドではなくオンプレミスのオープンシステムを想定しているのでしょう。ただ、将来的にはクラウドへの移行もしやすくなると考えられます。

sports_rock_climbing_man.pngミッションクリティカルなアプリケーションをクラウドへ移行させようというのはクラウド業界の長年の取り組みで、ここへ来てAWSなどが取り組みを本格化させています。ただ、Amazonなどが目指しているのは、既存のシステムをクラウド上で新たに構築し直す「リフト&シフト」です。

一方で、今回の記事の中に概念図があるのですが、それを見るとオープン系システムと業務アプリケーションの間にPITONを挟むような形になっており、業務アプリケーションのところには「手を加えず」と書いてあります。要するに、PITONはメインフレームのエミュレータという位置づけなのでしょう。

この方式にはもちろん、既存のアプリケーションに手を加えずにすむ、という利点があります。しかし、それが利点なのかどうかはよく考える必要があります。以前、RPAについても同じ様な記事を書きましたが、

RPA って、非効率なシステムを温存することになったりしないのか?

PITONも、同じ危険を抱えているように思えます。まあ、メインフレーム上のアプリケーションは、開発した人が退職したりでソースコードも残っておらず、誰も改変も作り直しもできない、というモジュールが今でも沢山あると聞いたことがありますので、そういった状況では仕方のない面もあるのかも知れません(それもRPAに似ていると言えば似ています)が、少なくともDXという観点(ビジネスプロセスを見直すのが本来のDX)からは、あまり褒められたものでは無いように思えます。

そして、気になるのはやはりパフォーマンスです。図を見る限り、変換用のレイヤーを挟む形となるため、どうしてもオーバーヘッドが発生するでしょう。そのオーバーヘッドが大きすぎれば実用にはなりません。まあ、今回はそのへんは大丈夫だろうと言うことで進めているのだとは思いますが、今後金融システムの多様化・高度化が求められる中で、それらとどのように折り合いを付けていくのか、という点は課題になるのではないでしょうか。

 

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