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RPA って、非効率なシステムを温存することになったりしないのか?

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先週のITソリューション塾で今話題のRPA(Robotics Process Automation)を取り上げたのですが、その後の呑み会で、「RPAって、非効率な業務システムを生きながらえさせることになるんじゃ無いのか?」という話になりました。

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RPAとは、事務効率を向上させるためのオフィス向けのソリューションで、人間がPC上で行う操作を自動化して効率化しようというものです。ただ、PC上の操作を自動化するだけであればExcelなどで使うマクロなどもそうですし、アプリケーションを跨いで操作を自動化するツールも昔からあります。私としては、これらにAIの要素をプラスして、インテリジェントな自動化(自分で学習してプロセスを進化させていく)がRPAのキモだと思っていたのですが、どうも今現在の使われ方はそうでも無いようです。

今報道されているRPA導入の成功例は、生命保険会社や銀行などでの事例が多いようです。

三菱東京UFJ銀行が可能性を拡げる、金融機関でのRPA導入による業務効率化

データベースの数値をコピペする、といった単純作業が果てしなく続いていたのだそうで、

例えば、さまざまなデータベースや記録にアクセスして、証跡を残さなければならない業務では、複数回のシステムへのログインや、データの移動といった手順を経なければならない。単純作業に多くの手がかかっている領域だ。

これを自動化することで、もの凄い業務の効率化になると。まあ、それはそうなのでしょうし、ITを使って単純作業を効率化するのは別に間違ってはいないと思うのですが・・

BPRで対応すべき案件なのでは?

しかし、何かモヤモヤします。これって何かおかしくないでしょうか? 記事では業務手順の詳細や目的が書かれていないのでよくわからない部分もあるのですが、そもそも、データベースの値を人間がコピペする作業を延々と繰り返す、という一見非効率なワークフローが未だに続いていることが驚きです。何のためにそんなことしているのかもわかりませんが、規制とかそういったことなのでしょうか。

理想的には、規制のせいだとすれば規制の要件とか、そうでなければ業務プロセスそのものを見直して(BPRですね)ワークフローを根本から変えるべき案件なのではないかと思います。それが無理でも、DBやサービス間のデータ移動を自動化するのであれば、クライアント側でRPAで対処するのでは無く、サービス側でその仕組みを組み込むのが王道というか、まずは考えるべきことなのではないでしょうか。

それをせずに、非効率なシステムを隠蔽するかのように小手先の自動化(というとRPA界隈の方々からから怒られるかも知れませんが)で逃げることで、この非効率なワークフローは今後また何十年も手を付けられずに生き残ることになりはしないでしょうか? それをRPAで解決できる大手は効率化でき、そうでない中小は相変わらず、ということでは、企業間の格差も広がりそうです。

規制などは行政との絡みもあるでしょうから、システム(ITシステムではなく、処理全体)を変えるのは大変なのかもしれませんが、それにしても。(「そんなの理想論だよ」という声も聞こえてきそうですが)ペーパーレスとか行政の効率化とか、何十年も前から言ってるのに、全然進んでないってことですよね。(そして、これからも進むことは無いというかその気は無いというか)

こちらの事例もそうです。紙を無くせないのでOCRとRPAでなんとかしました、ということです。

SMFGとSMBC、RPAとOCRで事務作業の入力効率化

そうじゃなくて! 紙を無くすことを考えないと。(まあ、それができないからやってるんでしょうね。現場は大変そうです)

アメリカのRPAは狙いがちょっと違う?

銀行や生保の例は、問題先送り、現場あわせという誠に日本的な解決と言うこともできそうです。ただ、多くの人が単純作業から解放されるというのは純粋に良いことでしょう。こういう自動化なら「職を奪われる!」ということにはならず、「非人間的な仕事をITがやってくれる」という構図になります。

アメリカのRPAの会社のプロモーションビデオが面白いのですが、彼の地でも似たようなことはやっているようです。

NICE Robotic Automation: Set your People Free!

しかし、アメリカの雇用形態は日本とは違い、採用時点で業務内容が決まっていますので、この人達が単純作業から開放された結果、他の職種に就けるかどうかは保証の限りでは無いでしょう。この動画は、自動化することでクビを切りましょう、という、経営者向けのアメリカ的なアピールなのでしょうね。

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