Armがレイオフへ ~企業価値は維持できるのか?
NVIDIAによるArm買収断念の影響が早速出てきました。
人件費削減の一環と説明していますが、このタイミングで出てきたと言うことは、明らかにNVIDIAとの破談が原因でしょう。またこれは、Armの再上場へ向けた財政健全化の第一歩であるとも考えられます。Armは「ビジネスチャンスとコスト管理のバランスを適切に保つため、継続的にビジネスプランを見直しています」とコメントしているそうですし、Armの新CEOは早期のIPOを目指すと言っています。
「2023年3月期中」の上場を目指すと言うことです。来年3月までってことですよね。かなり急いでいる印象です。やはり、親会社のソフトバンクが急がせているのでしょう。投資会社としてのソフトバンクとしては、とにかく早く現金が欲しいのでしょうから。
こちらに、法林岳之さん、石川温さん、石野純也三、房野麻子さんの対談という贅沢な記事があるのですが、
この中で石川さんは、ソフトバンクがArmの売却を決めた背景として以下の様にまとめています。
孫さんとしては、Armを買った段階でゆくゆくは上場しようと思っていた。そのために社員をたくさん雇って技術を開発しようと思っていた。しかし、コロナ禍になってしまい、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが持っている株価が軒並み下がってしまって「これはヤバいぞ、現金化しなきゃいけない」という中で思いついたのが、ArmをNVIDIAに売却すること。
さすが、完結にまとめますね。法林さんは
投機にしかなっていない
と厳しいですが、これがソフトバンクの投資会社とIT企業という2面性を現わしていて面白いです。投資会社としてのソフトバンクは、買ったArmをなるべく高値で手放すのが仕事ですが、IT企業としてのソフトバンクとしては、Armは最終的には上場させるけれども、それまでは投資をして大事に育てるというビジョンを描いていたはずです。
それが、株式市場の停滞や他の案件の失敗などで繰り上げざるを得なくなっていると言うことでしょう。
無傷で残ったNVIDIA
一方のNVIDIAにとっては、買収断念の影響はほとんど無いと言われています。
こちらの記事でも、
ArmはIPOを選択せざるを得ないが、NVIDIAの資本が無いためにやや弱い企業になると書いています。ソフトバンクにとっても、IPOによるリターンは買収よりも減るだとうとしています。最近の株価ベースでは、Armの売却価値は当初の400億ドルから540億ドルにまで上がっていたそうです。
結局、騒動の末に、NVIDIAだけが無傷で残ったと言うことになります。やはり本業が強い企業は、少々のことでは揺るがないと言うことで、ソフトバンクにとっては弱り目に祟り目ということでしょうか。ここが踏ん張り処です。
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