IoTにも広がるコンテナ そこに死角は無いのか?
毎年多くの新技術/新サービスが発表されるAWSのre:Inventが、今年も開催されました。40以上の新サービスが発表され、中にはオリジナルの学習用AIチップを使ったインスタンスも含まれます。その中で、こんな記事が目に付きました。
Raspberry PiでAWS互換のコンテナ環境を作れるAmazon ECS Anywhere。AWSがコンテナとKubernetesでハイブリッドクラウド/マルチクラウド対応へ大きく踏み出す
今回発表されたのは、Amazon ECS(Elastic Container Service)互換を実現する「Amazon ECS Anywhere」と、「Amazon EKS(Elastic Kubernetes Service)」互換を実現する「Amazon EKS Anywhere」です。AWSのクラウドで動いているのと同じ環境をオンプレミスに持ち込めると言うことですね。しかし、この発表はそれだけではなく、Raspberry Piでも動作するというところがミソです。
Raspberry Piというのは、Armチップを載せたホビー用のワンボードコンピュータです。手のひらに載るサイズで、数千円で入手できますが、電源等は別途必要です。ホビー用とはいえ、IoTデバイスの開発用としてもいろいろ使われています。ということで、この記事はAWSがIoT環境でも使えるAWS互換のコンテナ環境の提供を開始した、ということを言っているわけです。
AzureでもIoT用のコンテナサービスはありますが、今回はコンテナオーケストレーションの標準であるKubernetesがサポートされたことが大きいと思います。(Azure IoT Edge Connector for Kubernetesというのがあったと思いますが、正式サービスにはなっていないようです)これで、今後IoTでもKubernetesが標準になっていく方向性が確実になりました。
Raspberry PiでKubernetesを動かす、というのはいろいろな人が昔からやっていましたので、動くことはわかっていましたが、
今回、AWSが正式なサービスとして出してきたことは大きな意味があります。なんといっても、AWS互換の環境ですから、エッジからクラウドまでを統一でき、IoTエコシステムの構築がこれまでよりも簡単になります。
Raspberry Piの最新のモデルは4コア/4GBと結構強力で、Linuxなどは難なく動いてしまいます。IoTデバイスへの組み込み用としては結構強力な部類に入るとは思いますが、今後さらに小型化と省電力化が進めば、数年以内には多くのデバイスに組み込めるくらいのサイズ/コストになるでしょう。それを見込んで、今から開発を進めるということでしょう。
コンテナはキャズムを越えたのか?
半年前にこんな記事を書いたのですが、
このときは「2020年内に日本でもコンテナがキャズムを超える」という記事を紹介しました。今、まさに2020年末ですが、キャズムは超えたのでしょうか?検索しても引っかかってこないので、まだわからないのでしょうね。年明けくらいに何か出てくるのかも知れません。ただ、日本がもたもたしている間に、アメリカのプラットフォーマーは遙かに先を進んでいるということです。日本もいつかは追いつくのかと思っていましたが、今のところ差は開く一方のように思えます。
求められるセキュリティ/障害対策
この記事を書いている最中に、Googleの大規模障害が起きました。
たった45分間とはいえ、影響は甚大です。少し前にはこんなことも。
IoTにコンテナがおよぶということは、そこもクラウドの一部になるということでもあります。電気が消せないくらいなら命に関わることは無いでしょうが、デバイスによっては深刻な事態を招くことも考えられます。「便利になる」といって喜んでばかりもいられません。すべてが同じ環境で運用できる、ということは、すべてが同じウイルスに対して脆弱となる可能性も示しています。安定した稼働、セキュリティについての対策が急務です。
「?」をそのままにしておかないために
時代の変化は速く、特にITの分野での技術革新、環境変化は激しく、時代のトレンドに取り残されることは企業にとって大きなリスクとなります。しかし、一歩引いて様々な技術革新を見ていくと、「まったく未知の技術」など、そうそうありません。ほとんどの技術は過去の技術の延長線上にあり、異分野の技術と組み合わせることで新しい技術となっていることが多いのです。
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