RPAの導入にあたって、もう一度考えておくべきこと
RPA(Robotic Process Automation)が日本で大きな話題になったのは、ここ4-5年のことだと思います。元々PC上のアプリの自動操作という機能は、マクロなど各アプリの機能として組込まれていたり、画面から情報を抽出するツールで実現できていましたが、操作の信頼性を高めたり、工程を自動キャプチャするなどの機能を整備して使いやすくしたものがRPAということになるかと思います。
RPAが話題になり始めた頃、この技術(製品)に過度に期待するのは危険ではないか、というような記事を書きました。
業務プロセスを改善してそれをIT化することで効率を上げるのが本来のアプローチ(これこそがDXです)だと思うのですが、RPAはプロセスをそのままにして自動化をしてしまうため、業務プロセスの改善が伴いません。それどころか、一旦RPA化してしまうとその業務はむしろそこで固定化されてしまい、将来的に本質的な改善が期待できない、ということになってしまいはしないか、ということです。
RPAがアプリ側の機能改善も制限し始めている?
RPAの弊害と言える事例がもうひとつ出てきました。
SmartHRはクラウド型の労務管理ツールで、CMにタレントを使うなど、順調に業績を伸ばしているようです。そのSmartHRが自社サービスの機能強化のためにアップデートを予定しているようなのですが、それによって画面操作の一部が変更されるため、RPAで自動化している顧客企業に注意を呼びかけています。
これも、RPAツールの弊害と言えるでしょう。ベンダー側はユーザー体験を向上させたり、競合上の優位を維持するために日々機能の改善を行っています。そのためにメニュー構造が変わったり、画面レイアウトが変わることはありうることですし、それが使い勝手の向上に繋がるのであれば、歓迎すべき事です。しかし、この場合の使い勝手は「人間」にとっての使い勝手であり、機械(RPA)にとっては迷惑以外の何者でもありません。アップデートによって余計な作業が発生するのは誰もが嫌がります。RPAの場合、それをエンドユーザーが行わなければならない場合も多いでしょう。自動化のために採用したツールを使い続けるために定期的にメンテナンスが必要になるとしたら、本末転倒も良いところです。
しかし、だからといってベンダーに「機能強化の際にUIを変えるな」とは言えませんし、言うべきでも無いでしょう。それによって恩恵を受けるユーザーの方が(今のところは)多いはずです。結局は、RPA導入検討時にこの部分も織り込んで評価を行う必要があるということでしょう。どのようなソリューションにもメリットとデメリットはあります。大事なのはそれらをきちんと評価し、な得した上で導入の可否を決めることでしょう。
RPAについてはこんな記事も書いていますが、
規制の厳しい業種などにおいては、自社で勝手にプロセスを変えることができない場合があり、そういった場合の緊急避難策としては意味がある、というようなことを書きました。この記事の最後に書いた考えは、今でも変わりません。
少なくとも「この方向性は理想とは違うが、とりあえずは仕方ない」という認識だけは持ち続けていた方が良さそうです
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