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登録会員数から考えるYahoo!とLineの経営統合 ~21世紀の石油を探して

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昨日、Yahoo!とLineの経営統合が発表されました。昨日今日はこの話題ばっかりですね。

ヤフーとLINEが統合合意を正式発表

両社の統合によって双方の事業領域を補完できシナジーが期待できる、日本最大級のインターネット企業誕生、GAFAに対抗、など、いろいろな評価がされています。その辺は、今後統合の中身が明らかになれば見えてくるでしょう。上の記事でも触れているように、

日本及びグローバルにおける熾烈な競争を勝ち抜くことができる企業グループへと飛躍する

ということで、やはりGAFAやBAT(特にAmazon)への対抗、という側面が強いのではないでしょうか。

【LINE・ヤフー統合会見】きっかけは米中IT巨人への危機感。ヤフーのラブコールから統合実現

この経営統合は、Yahoo!の親会社であるソフトバンクの意向が強く反映されていることは間違いないでしょう。50%ずつ出資する新会社を設立するなど結構無理してるな、という感じはありますが、それでもYahoo!(そしてソフトバンク)はLineが欲しかったわけです。統合には様々な狙いや効果があるでしょうし、それに関する様々な記事が出ていますが、私は「データ」に注目しています。

sekiyu_saikutsu.pngデータは21世紀の石油

GAFAやBATなどのプラットフォーマーの力の源泉は、データです。データは「新しい石油」とも「21世紀の石油」とも言われ、あらゆるビジネスの基盤となるものであると言われています。

データ・ルネサンス―「21世紀の石油」で新しい価値を生む

あらゆるデータを蓄積してそこから様々な知見を得、現場にフィードバックすることで付加価値を生み出すことができます。Amazonなどの小売りでは、顧客の購買データを解析することで売れ筋商品や不人気商品を見極め、広告やレコメンデーションなどでさらなる消費に繋げることができ、広告費も稼ぐことができます。IoTなら、工場内のデータを収集して解析し、生産の効率に結びつけたり、自動運転であれば、最短の配送経路を見つけ出したりできます。こうして集めたデータはAIの訓練にも活用でき、データをさらに効率的に処理できるようになります。データを収集・処理し、活用するエコシステムができあがっているのです。

データを集めるためには、多くのユーザーに自社サイトにアクセスして貰う必要があります。GoogleがYouTubeやGoogle Mapなどを無料で提供し、FacebookがSNSサービスを無料で提供し、Amazonが翌日配送などでユーザーの利便性を最大化しようとしているのは、すべてデータを集めるためと言って良いでしょう。

そして、それらのデータを「使えるデータ」にするためには、会員登録をしてもらう必要があります。それによって、様々なサービスの利用をユーザー毎に集計することができるようになるのです。個人情報に紐付けされていないアクセスデータは、いくらあっても質の良いデータにはなりません。

さらに、その個人情報にクレジットカードや銀行口座などの決済情報が紐付いていれば、コンシューマビジネス向けには最強のデータとなります。

データを集めるソフトバンク

以前のブログで書いたように、

ソフトバンクの100億円キャンペーン、見据えるのはAmazon

PayPayが100億円(第2弾もありましたから、200億円ですね)キャンペーンは、後発であるソフトバンクグループが一気に登録ユーザー数(しかも決済情報が紐付けられた)を増やすために仕掛けたキャンペーンとみることができます。以下の記事によると、

ソフトバンク、LINEを実質買収で広がる信用不安...巨額有利子負債抱え"自転車操業"

キャンペーンのおかげか、PayPayの登録者数は1900万人。Lineペイの登録者数は3690万人ということです。重複もあるでしょうが、合わせると5,000万人くらいにはなりそうです。これは日本の人口を考えると、ほとんど上限に近いのではないでしょうか。PayPayのユーザー数を増やすのは時間がかかりますし、限界もあります。Lineとの経営統合は、手っ取り早くユーザーを獲得するためにはどうしても必要な手段だったと言えます。

Amazon Payや楽天ペイの会員数は探しても出てこないので公表していないのかも知れませんが、ECサイトとしてのAmazonと楽天の月間利用者数は各々約4,000万人だそうです。一ヶ月に複数回使う人もいるでしょうが、一回も使わない人もいるでしょうし、登録者数としてはPayPay+Lineペイのほうが多いかも知れません。

「アマゾン」「楽天市場」が約4000万人で拮抗、「Yahoo!ショッピング」は2645万人【ECサイト月間利用者数】

さらに忘れてはいけないのが、ZOZOです。

ZOZOに忍び寄る「成長鈍化」の衝撃、会員数減少でも次の手見えず

これも「年間購入者数」というよくわからない指標ですが(どこも会員数を公表したくないのでしょうね)、800万人ということです。登録者数はわかりませんが、これで少なくとも5,000万人に数百万人は追加されるでしょう。

ということで、相次ぐ買収・経営統合によって、日本国内の登録ユーザー数では、Amazon/楽天に匹敵、あるいは凌駕するくらいの規模には達することができる、ということではないでしょうか。今後、これらの登録ユーザーの名寄せを行い、データを統合していくのだと思います。

Armはどのような働きをするか?

今後はこの資産をどこまで有効に使えるかが問われるわけですが、ソフトバンクには他のプラットフォーマーにはない強みもあります。それが、Armです。半導体設計メーカーを傘下に持つことで、他のプラットフォーマーにはできない展開も考えられます。例えば、

Arm Pelion が IoT 企業の DX を後押しする

の後半で書いたように、デジタル・ディスラプター(プラットフォーマー)に対抗するためのソリューションを提供しています。これを軸にグループ全体でデータ活用に取り組むことができますし、他社との協業を通じてシナジーを生むことも可能となります。

Lineの出澤社長はengadgetの記事でも「米国や中国の巨大企業に時価総額、営業利益、研究開発費、従業員数いずれでも及ばない」ことに言及しており、それをグループの力でどこまでレバレッジできるのかがポイントとなりそうです。

 

「?」をそのままにしておかないために

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