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Arm Pelion が IoT 企業の DX を後押しする

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Armは、以前は「知る人ぞ知る」企業(今でも有名とは言えないかもしれませんが)でしたが、ソフトバンクの傘下に入ってからはニュースリリースの数が確実に増えていますね。先週、IoTについての新しい発表がありました。

急成長する「Arm Pelion IoT Platform」のパートナー・エコシステムにIntel、Arduino、myDevicesが参加

IoTの勝者」とも言われるArmですが、そのパートナーにIntelが参加したというのです。

IoTは巨大な市場になることが見込まれることから、IoT機器からのデータを収集してサービスに繋げるための基盤となる「IoTプラットフォーム」には様々な企業が参入しており、百花繚乱の様相を呈しています。

IoTプラットフォームとは何か? 正しい選択をするためのたった1枚のスライド

その中で、これから爆発的に増えるIoT機器の大半に搭載されるであろうArmが主導するPelionに、サーバー/PCの大半を握るIntelが参加したということは、凄いことです。インフラやアプリレベルでの連携を目指す他のプラットフォームとは一線を画すもので、チップレベルのプラットフォームとしては、これ以上の規模は望めません。将来、IoTプラットフォームの標準のひとつとなる可能性もあります。

internet_mono_things.pngもうひとつの仕掛け、CDPとは

そしてPelionは、チップレベルだけのプラットフォームではありません。ArmがPelionを発表したのは今年の8月ですが、それに先立ち、いくつかの企業を買収しています。その中のひとつがトレジャーデータです。

Armの「世界初」のIoTプラットフォームは何ができるのか

トレジャーデータは、CDP(Customer Data Platform)の会社です。CDPはデジタルマーケティングのためのツール/サービスで、様々なチャネルからアクセスしてくる顧客情報を集約して顧客の行動を把握することができます。

現代の消費者は、何か物やサービスを購入しようとする時、オンライン/オフラインを跨いで様々な方法で情報収集をします。企業のWebサイトで商品情報をチェックし、SNSで友人の意見を聞き、実際の店舗で実物を見、コールセンターに質問をするかもしれません。そして、オンラインで情報を集めたあげく、購入は実店舗で行うかも知れません。こういった行動を繋ぎ合わせて、ひとりの顧客としての一連の行動にまとめることができれば、顧客が購入に至る経緯を把握でき、将来のプロモーションに結びつけたり、情報収集の段階で留まっている顧客に購入を促すメールや郵便を送ったりといったことが可能になります。電話番号やメールアドレス、SNSのIDなどを使ってこういった情報を繋ぎ合わせるのが、CDPと呼ばれるサービスなのです。

デジタル・ディスラプターへの対抗を手助け

ではなぜ、半導体チップの設計を行うArmがCDPの会社を買収したのでしょうか?

それは、データの重要性が増すからだと思われます。これからのIoTプラットフォームには、データを集めるだけでは無く、それを繋ぎ合わせ、解析する能力が必要だと判断したからではないでしょうか。

現代は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代です。そしていち早くDXを成し遂げた企業は、デジタル・ディスラプター(破壊者)となり、DXに遅れた企業を駆逐し始めます。AmazonやGoogleは今や膨大なデジタルデータを手中にし、それを使ってビジネスを有利に展開しています。DXに遅れた企業が追い上げるのは容易ではありません。先のMONOistの記事の中で責任者が「顧客×Arm・トレジャーデータによって、デジタル破壊者に勝つ」と言っています。決してチップレベルのプラットフォームでは無いのです。

DXにしろAIにしろ、現代はビッグデータを握った企業が生き残ります。しかしそれは、ただただデータをため込めば良いことを意味するわけではなく、如何に蓄積し加工して役立つ知見に結びつけるか、ということまでが問われているのです。

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