MicrosoftがAndroidスマホを発表 ~Windows Mobileは本当に終わりなのか?
Microsoftが何年かぶりにスマホを発表しました。しかし、これがまさかのAndroid端末でした。
MicrosoftはナデラCEOになってから大きくクラウド/OSSに舵を切り、AzureでLinuxをサポートしたりWindowsとLinuxの連携を強化したりしてきましたが、まさかスマホでAndroidを採用するとは思いませんでした。自社技術への拘りを棄てたとはいえ、これは驚きの決断です。Windows Mobileの復活の芽は完全に無くなったのでしょうか?
ハードウェア的には、昨夏このブログでも紹介した「Andromeda」ということになるでしょう。
しかし、この時点で
と言っていますので、かなり時間がかかってますね。しかも、今回の発表でも出荷は来年末ということ。
早くからスマホOSに取り組んで来たが成功できなかったMicrosoft
Microsoftは、スマホはおろかガラケーよりも昔のPDA時代から携帯端末用のOS(Windows CE)を出しています。その後の経緯は名前や位置づけがコロコロ変わって説明するのが難しいので省きますが、結局あまり成功したとはいえず、後から出たiOSやAndroidに差を付けられてしまいました。この系統の最後のスマホOSが「Windows 10 Mobile」で、日本でも対応端末が販売されましたが、結局売れないままに2017年、開発の終了が報じられました。
まあ、自社OSの開発を終了して、それでもモバイルデバイスを開発すると言うことは、何らかのOSを外部調達するということでしょうから、それがAndroidであったことはむしろ自然なことなのかも知れませんし、ビジネス的には正しいでしょう。しかし、どこかに「それはさすがに無いだろう」という気持ちがありました。
自社OSであれば、その機能を最大限に引き出すハードウェアを自社で開発して出すことには意味があります。Appleはずっとそれでやってきていますし、Googleも自社端末を出しています。Surfaceのコンセプトもそれだったはず。しかし、Android端末をMicrosoftが開発する意味はあまり無いように思えます。
でも、ほんとうに諦めたのか? (しつこい ^^;)
ちうことで、いろいろ記事を見ていると、面白いものを見つけました。PC Watchの記事です。
この記事の冒頭に【お詫びと訂正】があり、このように書かれています。
初出時にWindowsとAndroidが動作としておりましたが、こちらはAndroid端末となります。お詫びして訂正させていただきます。
この記事自体は本当に誤報だったのかも知れませんが、これを見て、むしろ「なるほど、それ、あり得るな」と思ったのです。
HALのライセンスがどうなっているのかはよくわかりませんが、Androidが動くスペックのデバイスであれば、WOA(Windows on Arm)も動くはずです。今回はAndroidで出してきたとしても、プロトタイプとしてWOAが動いている可能性は高いでしょう。今後、タイミングを見てWindows対応を発表するつもりなのかも知れません。それどころか、ライセンス的に問題無ければ、既存のAndroid端末にWindowsを載せることもできるわけで、これは実現すればちょっと面白いことになります。
こちらの記事では、担当者が
「これはSurfaceだ。皆さんがこれを電話だとか、コミュニケーション端末だとか言うだろうと、超ハッキリ(super clear)分かっているけど、それに、確かにこれはその両方でもあるんだけど、これはSurfaceなんだ」
と言い、「メディアのインタビューでも、「電話じゃない」と何度も言っています。」と書いています。電話じゃ無い=Windows Mobileじゃ無い=WOAが動く携帯端末である、ということですね。でも、電話もできる(笑)。
「スマホ」でこれ以上戦っても勝ち目が無いという判断から、「スマホではない、スマホみたいなデバイス」というカテゴリを新たに作って、そこにはめ込もうとしているのかも知れませんね。
ビジネススマホとしてのWindows Mobile
スマホやタブレットが普及した現代においても、企業内のデスクトップ/ノートPCはまだまだWindowsです。オンプレミスのサーバーにもWindows Serverが使われており、AzureのシェアもAWSを抜いたとも言われています。つまり、Microsoftはクラウドとオンプレミス、クライアントPCを抑えている唯一と言って良い企業であり、欠けているのがスマホなのです。
MicrosoftはAndroidやiOSへの対応を進めることでこの部分をカバーしていますが、本音としては自社OSで固めたいところでしょう。ユーザー側からしても、セキュリティ面や設定や管理の容易さなどから、メリットは大きいと考えられます。スマホがコモディティ化し、iOSとAndroidの差が縮まり、UXの進化も一段落して安定してきた今だからこそ、Windows Mobileがその強みを発揮できるとも言えるかも知れません。
DuoのCPUは何だ?
Surface Duoが将来Windowsに対応するかどうかは、DuoのCPUに何が使われているかで予想することができるかも知れません。Win32との互換性が無く失敗に終ったWindows RTとは異なり、今のWOAはIntel版Windowsと高い互換性を持っています。その代わり、現時点ではQualcomの一部のCPUでしか動作しません。
今回、MicrosoftはSurface Pro X用にQualcomと共同開発したSQ1というチップを発表しましたが、これはWOAが動くSnapdragonの強化版と考えられます。
DuoのCPUが何なのか、探してみましたが見つかりませんでした。もしDuoのCPUがこのSQ1、あるいはこれから出荷までの1年間に出てくる別のチップだとしたら、WOAが動く可能性は高くなります。面白くなってきましたね。
「?」をそのままにしておかないために
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