オルタナティブ・ブログ > Mostly Harmless >

IT技術についてのトレンドや、ベンダーの戦略についての考察などを書いていきます。

OpenにシフトするIBM、中立を保つRed Hat

»

以前このブログでも書いたとおり、今年7月にIBMによるRed Hatの買収が完了しました。その直後にIBMはOpenShift上のCloud Paksを発表するなど、IBMの製品やソリューションを積極的にOpenShiftに対応させています。つい先日も、OpenShift対応のメインフレーム「IBM Z」の新製品を発表しました。

日本IBM、OpenShift対応の「IBM Z」の新製品、ハイブリッドクラウドの切り札に

また、IBMが持つもうひとつの差別化要因であるWatsonも、OpenShiftを軸にマルチクラウド・ハイブリッドクラウド対応を進めているということです。3兆8千億円も出したのですから、積極的なのは当然でしょう。

umibiraki.pngRed HatはIBMに距離

ところが、一方のRed Hatからは、あまりIBMに関連する発表は出てきません。

レッドハット、「Red Hat OpenStack Platform 15」発表 - GPUをサポート

この記事でも、最後のほうでCloud Paksについて触れいてますが、全然目立ちません。こちらの記事でも、

IBMによるRed Hatの買収は、OpenShiftの製品戦略に影響を与えるのか

IBMが「IBM Cloud Foundry Enterprise Environment」をOpenShift上で動かしたことについて、

Red Hatとして、OpenShiftにCloud Foundryを組み込むつもりは全くない。

と言っていますし、

私はIBMの製品に関する計画を知っているわけではない(ので、IBMの考えを語ることはできない)

とまで言っています。買収されたにしては、あまりに冷たい感じがします。

IBMの深謀遠慮?

しかし、これはIBMが慎重にRed Hatとの役割分担を行っているからでは無いかと思います。記事の後半に、わざわざこんなことを言っています。

Red Hatの運営には変わりがない。当社が独立性を維持することは重要だ。ハイブリッドクラウドプラットフォームであり続けるためには、誰かのクラウドをえこひいきするわけにはいかない。IBMやIBM Cloudだけのために機能を作り込むようことはしない

そう、恐らくIBMは、Red Hatが持つ「オープン」「中立」というイメージを壊したくないのでしょう。実際、IBMは買収発表時のリリース

Red HatはIBMのHybrid Cloudチームの独立した事業部門となり、Red Hatから受け継いだオープンソース開発の資産とコミットメントの独立性と中立性、現在の製品ポートフォリオと市場開拓戦略、および独自の開発文化を維持します。

と、念を押しています。それでも、

IBMによるRed Hat買収が不安でたまらない人たちの言い分

といった意見を持つ人や、

IBMがRedHatを買収 気になるRedHat系OSへの影響

という見方をする人は多いのです。これは、Oracleが2009年にSUNを買収した後で、SUNが持っていたOSS資産がOracleによって非オープン化されたり、開発者が離脱したりしたことを覚えている人が多いからかも知れません。

OracleによるSun買収の影響

Oracleについては擁護する意見もあるのですが、どうしても悪い印象が残ってしまっている人も多いようです。(ちなみにこのとき、IBMもSUNの買収を考えていたとされていますね)

IBMとしては、せっかくのRed Hatのブランドを傷つけてしまっては元も子もありません。今後も「Red Hatは相変わらずRed Hatである」ことを発信し続けていくと考えられます。

 

「?」をそのままにしておかないために

figure_question.png時代の変化は速く、特にITの分野での技術革新、環境変化は激しく、時代のトレンドに取り残されることは企業にとって大きなリスクとなります。しかし、一歩引いて様々な技術革新を見ていくと、「まったく未知の技術」など、そうそうありません。ほとんどの技術は過去の技術の延長線上にあり、異分野の技術と組み合わせることで新しい技術となっていることが多いのです。

アプライド・マーケティングでは、ITの技術トレンドを技術間の関係性と歴史の視点から俯瞰し、技術の本質を理解し、これからのトレンドを予測するためのセミナーや勉強会を開催しています。是非、お気軽にお問い合わせ下さい。

Comment(0)