AmazonがOracleデータベースをAWSに移行
Amazonが、社内で利用していたOracleデータベースをAWSに移行させたことが話題になっています。
こちらが原文です。
Migration Complete - Amazon's Consumer Business Just Turned off its Final Oracle Database
これはブログ記事で、「移行が完了しました」という素っ気ないタイトルですが、移行の結果コスト削減とレイテンシの低減、技術者のオーバーヘッドを削減したということが強調され、宣伝色の強い内容になっています。
- データベースコストを60%削減
- コンシューマ向けアプリケーションのレイテンシを40%低減
- データベース管理のオーバーヘッドを70%削減
しかも60%のコスト削減については、Oracleからボリュームディスカウントを受けているAmazonの話で、一般ユーザーなら90%の削減が可能だとまでつけ加えています。近年のOracleのコスト高騰にあえいでいるユーザー企業にとっては気になる数字でしょう。
さらに後半で、Oracle(あるいは他の)データベースのユーザーがAWSに移行したい場合に利用できるツールやサービスを紹介しているあたり、このブログが単なる「作業終了のご報告」では無い事は明らかです。
AWSとOracleはここ数年、お互いに競争心剥き出しで応酬を続けて来ました。先月のOracle Open Worldでも、OracleはMicrosoftやVMwareとの協業を発表する一方で、来年にはAWSのリージョン数を抜くと強調しています。その直後に行われたAWSの発表はそれに対する痛烈な反撃と言えるでしょう。
(ただ、まだ一部にOracleは残っているようで、その辺はOracleの強さですね)
応酬は昨年から
クラウドサービスプロバイダーとしてのAWSは、クラウドに参入しそれをテコ入れしようとしているOracleと競合します。しかし通販サイトとしてのAmazonは、Oracleデータベースの大口顧客でもあります。
Amazonは数年前から社内のOracleをAWSのサービスに移行させるプロジェクトを進めていますが、昨年には移行に失敗してシステム障害を起こしたと報道され、
Oracleのラリー・エリソンが喜んで
「アマゾンは倉庫システムを(Oracle DBから)Auroraに移行し、システムをダウンさせた。アマゾンの内部文書を読むといい。アナリストの皆さんには喜んでコピーを配ろう」
と言ったと伝えられました。ところがその後、AmazonのCTOがCNBCの記事を否定しました。
Amazonプライムデーのサーバ障害、AmazonがOracleからAurora DBに乗り換えたのが原因ではない。Amazon CTOがCNBCの報道を否定
CNBCの記事ではOracleからAuroraへ移行したことでパフォーマンスが低下したとされていたところを「アプリケーション側の問題」と反論しているということです。
ただ、トラブルが起きたことは事実で、それが移行に関連していたことも間違いではないようです。アプリケーションの移行に失敗したのであって、クラウドDBの問題ではない、ということですね。
Amazonがマイグレーションビジネスで攻勢に出る?
トラブルはあったにせよ(これだけのプロジェクトですから、公になるならないは別に、トラブルはたくさんあったでしょう)、そのひとつひとつがAWSにとってはOracleからAuroraへのマイグレーションのノウハウになっていることは間違いありません。そして、ユーザーが本当に欲しているのは、この「経験」なのです。トラブルを乗り越えて巨大なプロジェクトを成功させたという実績は、むしろ顧客からの信頼につながり、AWSのマイグレーションビジネスがこれによって加速するのは間違いないでしょう。
AWSは半年ほど前からマイグレーションのアピールを開始しています。3月に住信SBIネット銀行のDB移行のニュースが流れていました。
この中で担当の方は、「移行中の一時的なコストは非常に高いが、それも含めて3年間でペイできると試算している」と言っています。Oracle、どんだけ高いんでしょうか・・
「?」をそのままにしておかないために
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