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「Microsoftがクラウドでトップ」って本当?

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クラウドサービスの世界シェアで、ついにAzureがAWSを抜いてトップに立ったということです。

AWSが世界のクラウドサービス市場で首位陥落、マイクロソフトが逆転

記事によると、

英IHSマークイットが調べた2018年の売上高ベースの市場シェアでマイクロソフトが対前年比2.4ポイント増の13.8%と大きく伸びたのに対し、AWSは同1.1ポイント増の13.2%にとどまった。

昨年はAWSが12.1%、Azureが11.4%だったのですね。2.4ポイント増ということは2割以上の増加ですから、凄い数字です。AWSも伸びてはいるのですが、追いつかなかったと言うことですね。

hyousyoudai.png私も2月にMicrosoftの追い上げについてブログを書きましたが、

MicrosoftがAWSを猛追 ~激化するクラウド間競争

正直こんなにすぐに追い抜いてしまうとは考えていませんでした。あと半年~1年くらいはかかるのかなと。脱帽ですね。

「マイクロソフトが首位」は誤解?

しかし、他の調査では、相変わらずAWSがAzureに大差を付けて首位、といっている調査もあります。

Microsoft Azureの売上成長率はこのところやや低下

この記事で引用されている調査では、まだまだAWSとAzureのシェアには大きな開きがあります。どちらが本当なのでしょうか?

TechCrunchの記事をよーく読んでみると、こんなことが書いてあります。

Microsoftは明らかにクラウドインフラストラクチャサービス(IaaS、PaaS、プライベートクラウドのホスティング)のナンバーツーだ

なるほど。「クラウドインフラストラクチャサービス」なんですね。これにはSaaSは入っていないようです。

Microsoftのサービスの方が単価が高い

最初の日経の記事は、SaaSを含む売上ベースのシェアということです。IaaSや、最近はサーバーレスなどのサービスの比重が大きく、単価を上げづらいAWSに対し、Office365などのAzureのサービスは競争力があるために単価を高く設定しやすいということなのでしょう。最近AWSが力を入れているサーバーレスなどはms単位の課金になっており、ますます売上を上げにくくなっていると考えられます。

そもそもIaaSから始まったAWSに対し、MicrosoftはOfficeなどの競争力を利用しながらクラウドに参入してきた(IaaSのサービス開始は遅れた)わけで、収益構造は元から違っています。SaaSの売上で見ればとっくにAzureの方が大きかったのでしょう。AWSにはSaaSに分類されるサービスは無いからです(よね?)。

全クラウドサービスで比較すると、単価の高いSaaSを抱えるベンダーが一方的に有利になる、という話ですね。確かに、この括りでの比較には無理があるのかも知れません。これからはIaaS、PasS(これも細分化しつつありますが・・)、SaaSという分類で比較する方が良いのでしょうね。

Amazonは既に別の収益源へ

一方で、こんな記事も出ています。

コラム:デジタル広告、アマゾンがグーグルのシェア奪う構図

「前年同期比37%という伸び」だそうで、クラウド部門と同等の伸び率とのことです。

一方アマゾンが立ち上げてから日が浅い広告事業が、市場で攻勢を続けている。同社は広告収入だけを区分していないものの、売上高全体における「その他」項目のほとんどを占め、第2・四半期は30億ドルに達した。前年同期比37%という伸びは、クラウドコンピューティング部門と同じぐらい高く、実店舗部門やオンライン店舗の拡大ペースよりもずっと急速だ。

利益率の悪いクラウド事業よりはこちらに注力した方が良いし、リテールこそがamazonの主戦場ですから、戦いやすいと言うこともあるでしょう。一方でMicrosoftはオンライン広告事業を譲渡してしまいました。

米マイクロソフト、広告事業をAOLへ譲渡 日本ほか9カ国で

どの会社も、選択と集中により、会社全体の効率を上げ、業績を上げていくことが重要で、一部のサービスのシェアに一喜一憂することにあまり意味は無いのかもしれません。

 

「?」をそのままにしておかないために

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