存在感を増す Arm、IoT では苦戦?
先週はSoftBank World 2019があり、孫さんのプレゼンでは当然Armにも触れられていました。今後10年でIoT機器向けに1兆個のチップを出荷するだろうと言っておられましたね。
好調に見えるArmですが、WSJに気になる記事が出ていました。
Armを買収当初の見込みが外れ、IoT市場の立ち上がりが遅いのだということです。
2014年から16年までアームでIoT事業を率いたクリスチャン・フロートナー氏は、「IoT分野の発展はわれわれの多くが期待したより遅い」とし、「人々は誤った期待を抱いていた」と述べた。同氏は18年初めにアームを退社した。
買収したときに、孫さんは短期の利益を追い求めないと言っていたと思いますので、多少の遅れで慌てることもないのでしょうけれど、株式市場的には大問題なのでしょう。ただ、ブルームバーグでは今週になってこんな記事も出ています。AIが好調との見方ですね。
IoTは踊り場に差し掛かった?
IoTについては、今週こんなニュースが飛び込んできました。
「ユーザーの利用状況を鑑みて終了を決めた」ということですが、まあ、あまり売れなかったのか、購入した人がそれほどサービスを利用しなかったのか、というところでしょうか。
今のスマートホームって、Alexaに話しかけて部屋の電気を点けるとか、リモコンを使わずにテレビのチャンネルを変えるとかだと思うのですが(うちは使っていないのでわかりませんが。。)、最初は使っても、結局は面倒くさくなって普通にリモコンとかスイッチを使うようになってしまうのかも知れません。魅力的なユースケースを提案できていないということですよね。テクノロジードリブンな世界だと良くある話で、とにかく提供側の思い込み(もしくは無理やりひねり出した)で使い方を提案してしまいます。その中に、本当にユーザーが使いたいユースケースがあればそれが起爆剤になったりするのでしょうが、今の所なかなか難しい、ということなのでしょう。これまで期待が先行して多くの企業が参入してきましたが、思ったほどに需要伸びず、早々に事業の見直しを行う企業が出てき始めたということでしょうか。とはいえ、数年レベルの停滞はあっても、モノのインターネット化が進んでいくのは間違いないと思います。市況を見ながらじっくりと取り組むのが良いのではないでしょうか。
日本企業は得てして「もう少し」とか言いながら傷口を広げるパターンが多い様に思いますので、早期に判断して撤退(一次退却かもしれませんが)というのは正しい判断のように思えます。クラウドは始めるのも止めるのもハードルが低いという特徴がありますから、今回の例に限らず、状況を見ながら適宜撤退したり、一時退却して機を見て再参入、といった柔軟な考え方の方が良いのでしょう。
IoT以外では絶好調!?
しかし、IoT以外の分野では絶好調のように見えます。AppleがMacにArmを採用する噂は以前から有りますし、
Microsoftも採用を検討中です。Arm版Surfaceって、以前もありましたが、Windows on Armのおかげで状況は変わっています。
特に、これまでArmがあまり使われてこなかったスパコン/HPCでの採用が増えています。富岳(次期「京」)で採用されたことでも話題になりました。データセンターは発熱と消費電力に悩まされており、Armの省電力性が評価されています。このところHPC分野に力を入れているNVIDIAも、Armのサポートを発表しました。
他のスパコンでの採用も進んでいるようです。
とはいえ、HPC分野は出荷数が少ないので、やはりビジネスとしてはIoTのほうが大きいと言うことでしょう。
Arm on Windowsも!
そしてもうひとつ、私が気になっているのがこれです。
これ、ずーっと追いかけてるんですが、世間の関心はまるっきり無いようで、全然記事が出てきません。。;_;) 自分で買って使ってみようかとは思うんですが、PCはもうたくさんあるし、どうしたもんでしょうか。それに、欲しいのはラップトップとかタブレットじゃ無いんですよ。理想型は、HP200LXです。あのフォームファクタ、フルキーボード(テンキーまで付いてる!)でARMベースでWindowsが動き、x86のソフトが動くマシンが出れば、少なくとも私は買います。^^;
「?」をそのままにしておかないために
時代の変化は速く、特にITの分野での技術革新、環境変化は激しく、時代のトレンドに取り残されることは企業にとって大きなリスクとなります。しかし、一歩引いて様々な技術革新を見ていくと、「まったく未知の技術」など、そうそうありません。ほとんどの技術は過去の技術の延長線上にあり、異分野の技術と組み合わせることで新しい技術となっていることが多いのです。
アプライド・マーケティングでは、ITの技術トレンドを技術間の関係性と歴史の視点から俯瞰し、技術の本質を理解し、これからのトレンドを予測するためのセミナーや勉強会を開催しています。是非お気軽にお問い合わせ下さい。