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マルチクラウドで先行し始めた Microsoft

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Microsoftが、あちこちのベンダーとパートナーシップを結びまくっています。先々週、OracleとMicrosoftがクラウドを相互接続するというニュースが飛び込んできました。

MicrosoftとOracle、AzureとOracle Cloudを相互接続

Microsoftはこのところ、クラウド関連のベンダーと相次いで提携を発表しています。5月にはRed Hatと。

マイクロソフトとレッドハット、「Azure」でマネージド「OpenShift」サービス提供へ

そして、4月末にはVMware(と、親会社のDell)と。

VMwareはハイブリッド・マルチクラウド時代に存在感を維持できるのか

これらの発表を見ていると、どうも「クラウドに若干乗り遅れて『これはまずい』と思っている」あるいは「クラウドの重要性はわかっていてなんとかしたいが、自社だけでは手が回らない」ITベンダーと積極的にパートナーシップを結ぶことで、Azureを中心としたエコシステムを強化しようとしているように思えます。

figure_ningenkankei_fukuzatsu.pngパートナーシップはMicrosoftの遺伝子

マルチクラウドに対するクラウド各社の姿勢は、積極的に相互接続に取り組むというよりは「APIを公開してあるからあとは勝手にやってください」というイメージでした。

IaaSのマルチクラウド対応を比較 AWS、Azure、Googleの共通点と違いは?

この記事では、どのベンダーもAPIを公開することで相互接続性を担保しているが、それを使いこなすのは大変であり、ユーザーは「プラグアンドプレイ」を望んでいる、と締めくくっています。Microsoftの最近の動きは、この問題の解決への取り組みではないでしょうか。

インフラを持ち、フルにサービスを提供できるクラウドベンダーとして生き残るのがこの3社だろうということは、ほぼ明らかになってきました。2番手としてのIBMやOracleは、自社技術に特化した部分で生き残らなければならないでしょう。その他(HPとかDellとか、どうしたんでしたっけ? ^^;)はどうなるのか。

かつて「悪の帝国」と呼ばれ、競合会社を排除しまくってきたMicrosoftですが、一方でハードウェアベンダーやアプリケーションベンダーとは良好な関係を構築してきました。パートナーシップの大切さもよくわかっているのです。自社だけでは手が回らない部分は他社にお願いしなければなりません。そういった考え方・文化が元々あったということでしょう。

Oracleとの提携はWin-Win

例えばOracleとの提携については、TechCrunchによると

Oracleにとってこの提携は、OracleのユーザーがOracleのクラウド内にあるOracleデータベースを使いながら、Oracle E-Business SuiteやAzure上のOracle JD Edwardsのようなサービスを展開できることを意味する。そのうえで、Microsoftはワークロードを展開し、Oracleもこれまで通りのものを展開する(AzureユーザーはまたAzureクラウドの中でOracleデータベースを引き続き利用できる見込みだ)。

と分析されています。また、

Oracleはこの業界で主要プレーヤーになることを望んでいるが、AWSやAzure、Google Cloudのような規模をすぐに展開できないということを認識している。

とも。

Oracleは、クラウドへの取り組みで出遅れ、現在でもAWS、GCP、Azureに比べて提供サービスなどの面で劣ることは否めません。しかし、顧客の流出を食い止めたいOracleとしては、データベースだけでも何とかOracleクラウドで使って欲しい。しかし、自社クラウドが提供できるサービスは限られている、それであれば他社を使って貰ってもかまわないから、DBだけは残してね、ということでの提携なのではないでしょうか。Microsoftにしてみれば、今なお根強い人気を誇るOracleを自社サービスのメニューとしてがっちり取り込め、データベース以外のサービスをOracleユーザーに売り込むチャンスとなります。

Microsoftは元々OSの会社ですから、その上で動くアプリケーションとしてのOracleDBは重要なパートナーです。SQLserverという競合製品があるので微妙なところもありますが、自社製品への拘りを棄て、クラウドに舵を切ったことで、その辺はもう問題にはならないのでしょう。Oracleとしても、AmazonやGoogleよりも提携しやすかったのかも知れません。(今後各社とも同じような提携を行う可能性はもちろんありますが)

せっかくRed Hatを買収したのに、出遅れるIBM

Red Hatとの提携も面白いですね。元々IBMによる買収が発表される前からパートナーシップは存在していたわけですが、買収が発表された今、親会社となるIBMの「ハイブリッド・マルチクラウド」という目標とコンフリクトする可能性もあります。しかも、この勢いだと買収が完了(これだけ巨大な買収だと、当局の審査に1年くらいかかると言われています)する前にMicrosoftが先にハイブリッド・マルチクラウドのエコシステムを造り上げてしまいそうです。

別に、IBMがサボっているわけではありません。しかし、米国においては、買収が完了するまでの間、企業のIR活動を自粛しなければならない期間(クワイエット・ピリオド)があり、積極的な情報発信がしにくいという事情もあるかと思います。(絶対駄目なわけではないですが、何かあると困るので、どうしても抑え気味になります)買収が完了するまでは新しいことはできず(やりにくく)、かといってお客さんは「次」がどうなるか待っている状況でしょう。その間に、IBMが想定していたマーケットは他社に荒らされてしまうのかも知れません。

クラウド3社のなかでも、一足先にパートナーとのエコシステムの構築に動いたMicrosoft。今、最も勢いのあるクラウドベンダーの次の一手が注目されます。

 

クラウドの未来はどうなる?

クラウドの世界は常に進化し続けています。IaaS上の仮想マシンはもはや昔のテクノロジーになり(もちろん仮想マシンが向いている分野もあります)、今はコンテナが花盛り。しかし、すぐ次にサーバーレスの時代がひたひたと近づいてきています。変化の激しい時代、何に注目し、何を追いかけるべきなのでしょうか。

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