Microsoftの開発環境がマルチプラットフォーム対応へ
Microsoftが.NET Frameworkのオープンソース化と、Mac/Linuxのサポートを発表しました。
これはなかなか衝撃的なニュースです。.NETはJavaに対抗するWebアプリケーション開発のフレームワークで、Microsoft製品を他社と差別化し、顧客を囲い込むための重要なコンポーネントでした。それをOSS化し、他プラットフォームにも公開するというのは、大きな戦略転換です。
以前のエントリーでも書きましたが、MicrosoftはナデラCEOになってから矢継ぎ早に新戦略を打ち出しています。今回の発表も、Windows環境への囲い込み、というこれまでの戦略を見直し、クラウド/プラットフォーム重視に転換した、ということでは無いでしょうか。Windowsが企業システムのクライアントをほぼ独占していた時代には、.NETをWindows環境に結び付けておくことによって、Javaに対抗できました。しかし、スマホなどの台頭によってWindowsの市場価値が下がってきた現在、そのまま.NETをWindows用に位置づけていては共倒れです。むしろ.NETをWindowsから切り離して、ベンダーを選ばないクラウド向けのプラットフォームとして位置づけたほうが良いとの判断だったのではないかと思います。
この発表があった2日前に、Techcrunchに次のような記事が載っていました。
この中でナデラ氏は
「それぞれの会社は独特の特徴を持っている」
と言っています。以前書きましたが、私もこの点は重要だと思います。加えて、
「Microsoftのビジネスとは他の人々にソフトウェアなどのプロダクトを開発する力を与えるところにある」
といっていますが、これが今回の発表の伏線だったのですね。。
フレームワークを語るときに重要になってくるのが、開発環境です。使いやすいプログラミング環境は、開発者を呼び寄せます。JavaがWebアプリケーションのプラットフォームとして成功できたのも、Eclipseという優れた統合開発環境があったからだとも言われています。(EclipseはIBMが開発したものをOSS化したものです)
この点、Microsoftには大きなアドバンテージがあります。Visual Studioです。
Microsoftは、アプリケーションを開発してくれる開発者を非常に大事にする会社で、毎年開発者向けイベントを多数行っており、MSDNの運営にも力を入れています。Visual StudioはWindows環境の開発ツールとして、利用者も多く、使い勝手の良さには定評があります。
はたして今回の発表でも、Visual StudioをOSS開発者向けに無償公開するという発表がありました。Visual Studioを使ってiOSやAndroid向けのサービスを開発できます。
一連の発表から推測できるのは、Microsoftは.NET FrameworkとVisual Studioをクラウド開発環境の標準にしようとしているのではないか、ということです。短期的な収益は追わず、じっくりとプラットフォームを浸透させる戦略と思われます。先のTechcrunchの記事で、ナデラ氏はこうも言っています。
「プラットフォームのプロバイダー、ツールのプロバイダーであることこそ、Microsoftの根本的なアイデンティティなのだ」