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Microsoftの苦境と可能性

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先日のエントリーで、まったくビジネスモデルの異なるGoogleとMicrosoftが闘うのは大変だ、ということを書きました。もちろんMicrosoftだって「こりゃヤバイ」と思って、いろいろな手を打っています。問題は、その効果がなかなか見えてこないところでしょう。

例えばMicrosoftは2007年にYahoo!を買収しようとして失敗しました。(その後もしつこく仕掛けてましたが、駄目でしたね) Yahoo!を買収できれば、Googleと同じ、検索広告を軸としたビジネスモデルを作ることができます。また、検索はすべてのインターネットの入り口であり、そこを押さえることの大事さもあったのではないかと思います。その後自社製の検索エンジンを強化して「Bing」を作りましたが、Googleに対抗するところまでは行っていないようです。

また、2012年にはそれまでの「禁」を破って自社製のタブレットを発売しました。それまで、自社でWindows搭載PCを販売することはなかったのです。(ゲーム機などは売っていましたが) 私はこれは、ハードとソフト/サービスを一体化させて付加価値を生み出しているAppleに対抗しようとしたのだと思います。最高のユーザー体験を生み出すためには、ハードもソフトもサービスもすべて自社でコントロールする必要があるからです。

余談ですが、Googleもかつて、自社ブランドのスマホ (製造はもちろんOEMですが) であるGoogle Phoneを発売したことがあります。Android搭載デバイスはメーカーが思い思いの改造を施し、互換性に影響を与えるレベルになっており、Googleとしての標準ハードウェアを定義したかったのではないかと思います。もっとも、Google Phoneはあまりうまくいきませんでした。コンシューマ向けのハードウェアを売るためには販路やサポート体制が必要ですが、それが当時のGoogleには欠けていたためと言われています。今ではSamsungが事実上のGoogle Phoneの位置づけのようです。

Yahoo!の買収は失敗し、初代Surfaceの売り上げも低迷し、Nokiaを巻き込んでてこ入れしてきたWindows Phoneも今ひとつと、苦戦が続いています。しかし、何と言ってもまだクライアントOSで大きなシェアを握っているわけですから、そう簡単に無くなるものでもありません。それに、何よりユーザー自身が、Microsoftを使い続けたいと思っているのではないでしょうか。

それは何も、Microsoftラブ!だからではなく、安定して使ってきた環境をなるべく変えたくない、という心理なのだろうと思います。企業システムでスマホを導入する場合、iPhoneやAndroidベースで一からシステムを構築するよりは、既存システムと相性の良い (と期待できる) Windows Phoneのほうが、検討の優先度は高いはずです。しかし、Microsoftは失敗を続けて来てしまいました。

昨年、スティーブバルマーは退任を発表しました。「私は古い時代の象徴であり、退く必要があるのかもしれない」と語ったとされます。

http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304894104579207100656021742

バルマーがやってきたことは必ずしも間違っていたとは思えませんが、なかなか結果が出なかったのも事実。Microsoftという巨大組織を覚醒させるためには、CEO退任という大きなショックが必要だったのかもしれません。

Microsoftは新CEOであるサティア・ナデラ氏の元、今年に入って次々に新しい方向性を打ち出しています。次回のエントリーでは、新戦略の可能性について考えてみたいと思います。

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