動き出したMicrosoft
前々回のエントリーで「次回は」とか書いておきながら、別の書込をしてしまいました。すみません。さて、Microsoftの新戦略についてです。
今年の2月にナデラ氏がCEOに就任し、3月末くらいから様々な動きが出始めました。全体としてはバルマー氏の時代から模索してきた方向性に沿いながらも、より踏み込み、スピード感を持った内容と感じます。以下に主なものをピックアップしてみました。
もちろん他にもいろいろありますが、前々回のエントリーからの流れに関連するものが中心です。全体から受ける印象として、Microsoftは以下の戦略を強く打ち出していると思います。
- ビジネスモデルの転換
- クラウドへのシフト (Azureの強化)
- モバイルへの取り組み
順番に見ていきましょう。まず、ビジネスモデルの転換について。
前々回のエントリーでも触れたように、MicrosoftはGoogleとの闘いにおいて、ビジネスモデルの違いに苦しんでいます。広告収益モデルによってスマホ用OSや様々なサービスを無償で提供できるGoogleに対して、ソフトウェアからの収益を諦めるわけにはいかないMicrosoftは不利な立場にあるわけです。
その中で、Microsoftは4月の開発者向けカンファレンスで、ついにスマホ・タブレット向けにWindowsを無償提供するという発表を行いました。ライセンス料を無視してでも、まずはシェアをとろうと言うことでしょう。
また、5月にはBingをデフォルトの検索エンジンとする廉価版Windowsを発表しました。
これは、Googleをデフォルトの検索エンジンとするAndroidや、Chromeと同じ狙いがあるものと考えられます。検索ユーザーをBingに誘導して広告収入を得ようということでしょう。MicrosoftがGoogleと同じビジネスモデルへの参入を模索しているのです。上記の無料化されるWindowsでも、検索エンジンはBingでしょうから、これらを合わせて、一刻も早く有効な広告モデルを構築したいということかと思います。(広告モデルが機能するかどうかは、ひとえにその普及台数にかかってきますから)
Microsoftにとって別の脅威と言えば、Appleです。(もちろんAmazonもですが、それはまた別途) タブレットを成功させ、Microsoftを追い詰めた最大の要因は、iOS機器の持つUX (ユーザーエクスペリエンス: 顧客体験)にあると言われています。Appleの製品は、ハードウェアの仕様、アプリのUI、サービスの設計が一体化されており、非常にスムースでシームレスなUXを実現しており、利用するユーザーは操作に迷ったり不快な思いをすること無く、様々なサービスをうけることができます。これは、スティーブジョブズが最もこだわったところで、Macintoshを含むApple製品全体に共通する特徴です。
そのAppleですが、創業当初から「ハードウェアメーカー」でした。そして、そのハードウェアとOS/アプリを含めたソフトウェアの一体的な開発にこだわり、一部の例外を除いてハードウェアもOSも外部にライセンスしたことはありません。「自社で全てをコントロールする」ことにこだわってきたのです。一時期倒産の危機にもありましたが、そのこだわりはiPhoneで見事に結実したと言えるでしょう。
Appleよりも早い時期からスマホ向けOSに取り組んで来たMicrosoftですが、見事にAppleに後れをとってしまいました。それを冷静に自己分析した結果が、「ハードウェアへの参入」だったのでは無いでしょうか? 以前はMicrosoftはソフトウェアの供給に特化し、ハードウェアはパートナーに任せていました。そのモデルは、PCではうまくいきましたが、UXが重視されるモバイルの時代に合わなくなってきているのではないか? Microsoftが自らハードウェアと一体化されたアプリ・サービスをトータルで提供していかなければ、Appleには勝てないと考えたのではないでしょうか。
その結果が、Surfaceの発売であり、Nokiaの携帯事業の買収であったのだろうと思います。発売当初は散々な評判だったSurfaceも、3世代目になり、評価は高まっています。(ちなみに、iPhoneも発表当時はネガティブな論調も多かったですよね)携帯事業の買収完了で、いよいよMicrosoftブランドのスマホの発売に目処がたちました。いよいよ (といっても、だいぶ遅れた感がありますが) これから、モバイル分野でのMicrosoft独自の動きが出てくるのではないでしょうか。
長くなってしまいました。続きはまた次回にさせて頂きます。