オルタナティブ・ブログ > Mostly Harmless >

IT技術についてのトレンドや、ベンダーの戦略についての考察などを書いていきます。

想像する能力

»

創造ではありません。想像。

最近よく見ている番組にNHKのSWITCHインタビューというのがあって、先週の回が登山家の竹内洋岳さんとフリーダイバーの篠宮龍三さんの対談でした。世界の8000m峰全てに(ほとんどが無酸素)登頂した竹内さんと素潜りで115mを潜る篠宮さんの「極限」の話。

番組の最後のほうで、篠宮さんが「いろいろなことを事前にシミュレーションしておく」という話をされたときに、竹内さんが篠宮さんに「失敗するシミュレーションもしますか?」と聞く場面があります。答えはイエスなんですが、竹内さんも「いかに人よりも多く想像できるか」を心がけていると言うことです。「山よりも想像できる」かどうかが、山で起こるかもしれない究極のピンチに対処する方法だと言うのですね。最悪のケースを含め、考え得る限りの状況をシミュレーションしておくことで、何が起こっても対処できる、ということなのでしょう。

番組の中頃に、竹内さんが雪崩に巻き込まれた話が出てきます。そのとき、「もう駄目か」と思った後、無性に怒りがこみ上げてきたのだそうです。雪崩の予兆を見抜くことができなかった自分への怒りということでした。想像が足りていなかったことへの後悔が怒りに結び着いたのだというのです。意識を失う寸前まで、怒りながら落ちていったのだそうです。(その後救助されて、今はお元気なわけですが)

この話を聞いて、ああ、ビジネスも同じだなあ、と思いました。もちろんビジネスでは命の危険に晒されることはありませんが、どんな場合にも、起こり得ることをできるかぎりシミュレーションしてから臨むことは、非常に大事なことだと思います。

お客様へのプレゼンテーションから展示会の準備・運営など、誰しも、計画を立てるときには想像力を使うでしょう。しかし、現実には細かいことも含めて予定通りに行かないことがほとんどです。計画通りに進んだ場合のことしか考えていないと、それから外れたときにどうして良いかわからず、立ち往生してしまいます。あらゆるポイントで、想定通りに行かない場合を想定し、想定している進み方以外にどのような事が起こり得るのか、思いつく限りのケースを想定し、対処方法を考えておく(全てのケースについて完全な対処法を考える必要はありませんが、少なくとも心の準備は必要です)ことによって、想定外の事態に対処できるのです。

そうして考えに考えても、人間の想像力を超えて何かが起こるものです。そういうときは「想像力が足りていなかった」わけですが、その次のときにはもっと想像力を広げることができるでしょう。想像する力は、鍛えることができるのです。

Comment(0)