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【800】iTunesUが急速に普及すると予想する、もうひとつの理由

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 先般、「東大の「iTunes U」参戦で、大学の授業公開は加速するか」 というエントリーを書き、この中で、今後急速に 「iTunesU」を利用する大学が増えるのではという私見を述べました。今回はその続きとして、なぜそう予想するのか、また逆に、なぜこれまで普及しな かったのか、もう少し考えてみたいと思います。

 現在、PCや携帯など動画再生機器のハード性能が向上し、動画を楽しめる環境が整ってきたのに伴い、Webを活用して動画を公開する仕組みが多数 普及しています。みなさんご存じのように、YouTubeに代表される動画サイトの活用もあれば、USTreamを活用する方法だってあるわけで、仕組み としては多くの選択肢が用意されています。大学独自でPodCastによる動画提供を実施しているところもあります。

 だったら、どの大学ももっと活発にやればいいのに…と思われる方も多いのではないでしょうか。しかしながら、講義の動画配信には、様々な「壁」があります。

 まず、コンテンツをどう作成するのか。実は公開する前提の講義は、多くの場合、視聴覚系の設備機器が整った講義室を活用し、ちゃんとカメラクルー が張り付いて収録しています。その後、映像素材を編集加工し、PowerPointや資料映像を編集段階でデータ挿入し…と、かなりの手間がかかっていま す。これをたくさんやるというのは、物理的にとっても大変なわけですね。

 それから、著作権の問題。大学の講義では、様々な素材を引用しながら講義資料を教員が作成するわけですが、この場合、著作権の許諾は必要とされて いないのです(著作権法第35条)。ところが、これを一般に公開するとなると、そうはいかなくなります。引用する場合には、すべて引用元に許諾をとり、場 合によっては著作権使用料を支払う必要も出てくるでしょう。ここは大変大きな障壁になり得る点です。公開をする前提と、しないのとでは、教員が講義資料を 作成する段階で大きな違いが生じてきます。

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 しかし。こうした問題も、解決の道は開けつつあります。まずコンテンツ作成の労力削減については、たとえばNECから発売されているi-Collabo.AutoRecと いう画期的なソフトを活用する方法があります。これはハイビジョンカメラで撮影された映像から、講師の動きを画像認識技術で抽出し、自動で編集してしまう という優れもの。講義室の後ろにフルハイビジョンビデオカメラを1台立てておき、黒板やスクリーン全体が収まる程度の画角で固定して収録さ えすれば、あとでこのデータを「i-Collabo.AutoRec」により自動で編集させることができます。これにより、あたかもカメラマンが操作した かのような映像作品ができあがります。PowerPointのデータ挿入など、まだ解決できていない問題はいくつか残っていますが、これなら収録の壁が一 気に低くなるはずです。

 また著作権の問題は、教材作成の前提を変えなければならないため、容易にはいかないかもしれません。逆に言えば、前提、つまり考え方を変えることで策を講じることができる。周囲の教員に聞いたところでは、「自分の研究を積み上げている教員には問題ない」。これからは、公開することを前提とすることが、教材作成のスタンダードになるのかもしれません。

 さらに。わたしが、大学の講義コンテンツの「iTunesU」による公開がさらに広まる可能性があると思う最大の理由は、大学の受験生向けPR活動に大きく貢献できると考えるからです。今、私立大学はもちろん国公立大学でも、受験生獲得のために、オープンキャンパスなどのPR活動を積極的に行っているのはみなさんご存じの通りです。

 このオープンキャンパスでのメインコンテンツとなっているのが、模擬講義と称される、大学の講義を高校生向けにアレンジし、デモンストレーション 的に行う講義。この大学に来ると「こんな講義が受けられますよ」、この大学なら「こんなことが学べるよ」を知らせる手段として、さかんに実施されているわ けです。人気大学では、オープンキャンパスの模擬講義は予約制となっており、受付開始から数日で満員となり、希望者全員が受講することができない状況まで 生まれています。

 それをオープンキャンパスだけじゃなく、いつでもどこでも見ることができるようになるのが、この「iTunesU」というわけです。自宅のPCでも、携帯・スマートフォンでも視聴可能。これを使わない手はない、と考える大学が出てきても不思議じゃないはずです。

 米国在住の友人にメールで尋ねたところ、米国では、受験する前の情報として「iTunesU」がごく普通に利用されているようです。先月Apple社が発表したニュースリリースによれば「2010年8月25日、iTunesUからのダウンロード数が開設からちょうど3年を超えて3億件を突破し…世界中で【800】以上の大学が現在iTunesUのサイトを運営…(後略)」(8月25日付けプレスリリースより一部引用)。

 機は熟しつつあります。こうしている間にも、コンテンツを用意し参戦準備を進めている大学があちこちにあるのではないでしょうか。

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