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【1.8人】 自転車通勤はヘルシーだエコだと、手放しでは喜べないいくつかの理由

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 4月。就職や進学、転職や異動など、何かと切り替わりの時期が今年もやってきました。先日、他大学に勤める友人が昨年から自転車通勤を始めたと聞きました。健康のために片道8kmのクルマ通勤を自転車に切り替えたとのこと。友人によれば、きつかったのは最初の1週間で、ペースがつかめてからは毎日が楽しくなり、数ヶ月でおなかが引っ込んでベルトの穴が2つ変わったとのこと。運動不足とわかっていながら何も手を打っていないわたしには、耳が痛い話でした。

 数日後、今度は別の友人から、この4月から転勤で勤務地が代わるのを機に自転車通勤を考えているという話を聞きました。立て続けの話に「○○、おまえもか~」という心境です。言わずもがな、40代という年齢はカラダのケアを真面目に考え始める時期。「自転車通勤はカラダにもサイフにも地球にも優しいから」と意欲満々の彼は、わたしにも強く勧めてきました。
 
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 ここ数年のガソリン価格高騰や不況の影響、そして健康志向の高まりもあり、自転車が注目されているのはみなさんご存じだと思います。データで見ると、自転車の普及は多少の凸凹がありながらも全国的に順調に進んでいることが判りますが、面白いのは東京における自転車保有台数の推移との比較。下記のグラフを参照ください。近年では全国推移を上回って普及が進んでいるようことが一目瞭然。データは割愛しますが、これは大都市圏に共通した傾向のようです。計算してみると、【約1.8人】に1台(全国)保有していることになりますが、世界的に見てもこの数値は上位にあります。
 
100329

自転車産業振興協会HPよりデータ参照。東京と全国を比較し易いように、全国保有台数は実数÷10でグラフ化してあります。
 
 もちろんこのデータだけで、都心部における自転車通勤者が増えているという判断はできません。ただ、クルマや公共交通機関に頼らず、様々な観点から自転車を使う人が増えていることは紛れもない事実です。
 
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 友人の話には少し続きがありました。友人曰く、一見いいことずくめに見える自転車通勤ですが、いざやろうと思うと、いろんな障害が待ち受けているそうです。まず、通勤時の事故対策。実際友人の職場では、長距離の自転車通勤に対して事故防止の観点から許可が下りなかったそうです。だからといって、職場には公共交通機関やマイカーを利用することにしておき、黙って勝手に自転車通勤をすると、通勤交通費の虚偽取得になってしまい、もめる可能性があります。またこの場合、万が一事故にあってしまうと、労災対象からはずれてしまう不利な事態を招きかねません。
 
 さらに長距離自転車通勤の場合は、確実に着替えが必要となります。特に夏場はかなり汗をかきますので、対策は必須でしょう。また意外に盲点となるのが自転車の保管場所。職場が都心のビルにあるような場合は要注意です。もちろん路上放置は論外。長時間の放置になるため、盗難防止の観点からも、事前に自転車置き場を確保しておく必要が生じます。
 
 自転車は交通法規上、軽車両に属し、厳密には車道を走ることになっています。ところが実際に都市部を自転車で走行してみると、かなり危険な場所があったり、迂回を余儀なくされるような交差点が数多く存在することに気づきます。自転車に決して優しいとは言えない道路環境が散在しているのが実情でしょう。
 
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 最近は自転車通勤者を「ツーキニスト」と称するそうですね。今後さらに普及するかどうかは、自転車に配慮した社会インフラの拡充や労使契約の見直しが進むかどうかで大きく変わってくるでしょう。いろんな面で効果が大きい自転車通勤ですので、今後の進展に期待したいと思います。えっ? わたしはツーキニストにならないのかって? それは痛い指摘…なりたいんですけど、片道20km以上あるんで、簡単にはねぇ。。。

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