【2.14倍】 就職氷河期の再来、は正しいのか、もうちょっと考えた
昨日のエントリー「就職氷河期の再来、は正しいのか」について、大木さんから鋭い指摘をいただきました。今日はそのコメントへのお返事も兼ねて、続きを書かせていただことにします。
■大木さんからいただいたコメント:
僕自身、ずっと「氷河期」という言葉が納得できていなかったのですが、昨日1Topiでエントリーしたのが、
http://twitter.com/shukatsu_1topi/status/7643981238
で、日経新聞の元記事は、
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20100111AT1D0801F08012010.html
です。
これを読むと、
> 「厳しい」といわれた10年春卒も求人倍率は1.62倍と過去20年間の平均的な水準
と書かれています。
なんか、もうしわけないですが、リクルートさん一社が飢餓感を煽っているように見えるんですよね。
就職氷河期という言葉が本来何を意味するのか、はさておいて、最近メディアが十把一絡げ的にこのフレーズを使うのには、わたしも非常に違和感を覚えます。大木さんが紹介いただいた日経の記事で使われている調査データ、大卒求人倍率は、実は昨年春に発表されているものです。当時、私も大木さんと同様の疑問を持ち、7月に下記のエントリーをしています。
【1.62倍】 今年の就活は氷河期の再来だって、誰が言ったのか?
数値をちゃんと見れば、これまで2度あったとされる就職氷河期、すなわち1996年3月卒者(1.08倍)や2000年3月卒者(0.99倍)に比べれば、1.62倍という数値は氷河期なのか? という疑問を抱くのが普通だと思います。
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ただ、この求人倍率は、結果ではなく予定数値から集計されています。すなわち、これくらい採用するつもりだという企業の調査回答を集計して計算しているわけです。よって実態や結果との乖離がある場合が多く見られます。特に、昨日のエントリーでも書いたように、計画を立てられない企業がかなり多くなっている現況下では、過去よりもブレが大きい。実際、2009年春に入社した学生たちは、過去最高の求人倍率【2.14倍】だったはずなのに、2008年後半からの急激な不況により、求人倍率をかなり下回る厳しい就活を強いられることとなり、結果として内定取り消しなどの事態を招きました。
このように、予測数値の集計である大卒求人倍率だけを見て、「氷河期だ」「氷河期じゃない」という見方をしてしまうのは、もう実態にそぐわなくなっているのだと思います。その意味で、日経がこうした指摘を現段階で記事にしていることには、個人的に拍手を送りたいですね。
ただ、じゃあ氷河期じゃないのね、楽観的でいいのね、と言われると、そうとは決して思いません。2009年卒者に比べると、2010年卒者の求人総数が23.5%も減少しており、この点で急激な悪化感が強く漂っているということは否めません。さらに、多くの企業が定員に満たなくてもレベルを下げてまで採用しないと考えていること、また、調査時点で計画が立っていない=採用計画保留組の動向によっては、状況がさらに悪化するケースも十分に考えられるということを、忘れてはならないでしょう。