【5000万枚】 他社が参入すればするほど、ヒートテックが売れる構図
銀座店2000人、新宿西口店1200人、梅田店650人…。これは10月27日早朝、ユニクロ60周年記念セールで開店前にできた行列に並んだ人数(毎日.jp)。最大のお目当てといえば、大ヒット商品となっているヒートテックでしょう。通常店頭価格1500円を600円で販売。枚数限定ですから、これだけ並んじゃ買えるわけがないと思うのですが、それでも並んでしまうのが今のユニクロの強さでしょうか。
ヒートテックをユニクロが売り出したのは2007年。これまでの常識を覆す「薄くて温かい」機能性インナーは、すぐに市場に受け入れられ、2007年2000万枚、2008年には2800万枚もの大ヒット商品に。リーマンショック以降の厳しい経済環境下でも快進撃を続けるユニクロの原動力と言われています。今年はさらに「見せる下着」として、ハイネックシャツなどを強力プッシュ。インナー兼アウターとして使える商品として新しいマーケットを作っています。
実際ヒートテックを着用してみると、その優れた保温性がすぐに体感できます。この「薄くて温かい」という老若男女誰にでもすぐにわかるメリットは、本当に強い訴求力を持っていますね。
もちろんこの状況を他社が黙ってみている訳もなく、2匹目、3匹目のドジョウを狙って続々と参入。総合スーパーやカジュアル衣料品店ではどこでも主力商品扱いで打ち出しています。イオンの「ヒートファクト」、イトーヨーカドーの「パワーウォーム」、西友の「エコヒート」、ユニー(アピタ)の「ヒートオン」などが代表的なところでしょうか。また総合スーパー系だけでなく、しまむら「ファイバーヒート」、ライトオン「エクストラ・サーモ」など、カジュアル衣料品店でも機能性インナーのオリジナル商品をラインナップしています。
でもこれらの商品、もし名前だけ並べられたらどこの商品かわからないのではないでしょうか。逆にいえば「薄くて温かいインナーはユニクロだけじゃないよ~」と言わんばかりの、ある意味実にわかりやすいネーミング(笑)。各社にしてみれば、ユニクロが先鞭をつけ、世の中に広めてくれた「薄くて温かい」機能性インナーという新しい市場で、ちゃっかり売上をいただきましょうということなんでしょうが、果たしてそうなるのでしょうか。
昨日近所のイオンで、機能性インナーの売り場を見ていたときのこと。するとやってきたおばちゃん3人連れが、イオンが販売している「ヒートファクト」を手にして、「これこれ、これだがね、ヒートテックって、どえりゃぁ温かいらしいよ」って大きな声で話してるんです。聞いてるわたしが恥ずかしくなるくらいの名古屋弁丸出しでしたが、まぁそれはともかくとして。それを聞いて、ふーんそーゆーことかって、何だかすっきりした気がしました。
世の中の人にとっては、「薄くて温かい機能性インナー」とは、「ヒートテック(みたいな名前)」で、「今じゃどこの店でもヒートテック(みたいな商品)を売っている」ということになってるんじゃないかと。つまり、「薄くて温かい」という機能性インナーが、「ヒートテック」というブランド名で認知されている、ということになるのでしょう。そういえばウチのカミさんも言ってました、「アピタでヒートテックみないなシャツ売ってたよ」って。
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ユニクロの柳井社長が、経済誌のインタビューでこんなコメントを残しています。
- (前略)…ただ最近はパイを広げたわれわれに追随し、似たような商品を出す業者も出てきた。各社で宣伝合戦しているが、われわれの宣伝をしてもらっているようなもの。最終的にはいちばん優れたものが売れます…(後略)
※東洋経済OnLine Businessインタビュー 09/11/27
ベーシックなアイテムで比較してみた場合、ヒートテックが1500円なのに対して、他社は780~1280円というプライスゾーンがメイン。低価格衣料品の代表であるユニクロの商品が、他社を含めた中で一番高いのです。柳井社長の仰る通り、「薄くて温かい機能性インナー」という新しいマーケットで、ヒートテックがブランドとして確立している一つの証といえるでしょう。
ユニクロのヒートテックは今や日本だけでなく海外でも評価が高く、「目標は年間【5000万枚】」(柳井社長)というまでのビッグヒットになりつつあります。ヒートテックは、日本の高い技術力を象徴する商品として世界中に広がりつつあるのです。ヒートテックという商品名が、機能性インナーを意味する普通名詞として扱われるような日も遠くないのかもしれません。
やっぱり日本という国は、新しい技術や機能を開発することで、世界から評価される国であってほしい。そう思います。