【2011年】 クルマには、エコよりも大事なものがあるんじゃないか
最近、クルマの話題といえば1にエコ、2にもエコって感じですね。2009年は、春のインサイト(ホンダ)とプリウス(トヨタ)のHV戦争、夏のiMiEV(三菱)・ステラ(富士重工)のEV市販モデル登場と、自動車開発史上に刻まれるような年になりました。折からの環境税制もフォローウィンドになり、今やエコカー全盛といった雰囲気です。(この話題は拙エントリー「小学校の頃、教科書で習ったこと」でも紹介させてもらいました)
環境に優しく、家計にも優しいクルマは、昨今の消費者ニーズにフィットしていると思います。ただ、クルマの開発史を俯瞰してみると、少し気になる点に気づきます。エコと並んで、いや、ひょっとしたらエコ以上に大事なテクノロジー。それは、「安全」技術です。最近、その影が少し薄くなっている感じがしませんか。
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日産が先頃、こんなニュースをリリースしています。
- ぶつからない車 米市場投入へ 全方位センサーで検知、日産が技術力アピール
日産自動車は23日、車の前後左右など全方位からの衝突を回避する安全技術を搭載した車種を【2011年】までに米国市場に投入する方針を明らかにした。高級車ブランド「インフィニティ」のラインアップに加える。車載センサーが接近車両を検知すると、ブレーキが自動的に作動し、衝突を回避する。こうした機能を持つ量販車は世界初となる見込みで、日産では「ぶつからないクルマ」として安全技術をアピールする考えだ。
※7月24日7時57分 産経新聞より一部引用
バブル期の前後くらいから、自動車メーカーは競って安全技術の開発に力を入れ、政府も1991年に「ASV(Advanced Safety Vehicle)推進計画」を立ち上げ、国家プロジェクトとして推進してきました。以後15年以上にわたり、ASVに関する技術の開発・実用化・普及に取り組んでいます。
こうした支援を受けながら、自動車メーカー各社は毎年のモーターショーでASVのプロトタイプを発表。この中から、いくつかの市販技術も生まれてきています。
たとえば「ぶつからないクルマ」の実現についても、2003年6月にホンダがインスパイアで世界で初めて「衝突直前の自動ブレーキ技術」を実用化したのに続き、2003年8月にはトヨタ自動車がセルシオに、日産自動車がシーマに、それぞれ搭載しています。
ただこれらも、クルマが衝突する時の衝撃を緩和するものという位置付けであり、残念ながら障害物にぶつかる前にクルマを止められるまでの技術ではありませんでした。
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以降、ASVに関する技術、中でも衝突回避技術で市販化まで到達したものはなく、プロトタイプの更新を繰り返すレベルに止まっています。ASVより以前に、大きくクローズアップされたITS(Intelligent Transport Systems)構想についても、カーナビやETCなどの情報活用インフラ普及に貢献はしているものの、こと安全技術については間接的な貢献にとどまっています。このところはエコ関連技術に半ば押され気味・・・というのが安全技術に関するトータルな印象ではないでしょうか。
そこに飛び込んできた日産のニュース。前方の衝突回避だけでなく、全方位での衝突回避を実現し、それを市販化にこぎつけるというのは、久しぶりの画期的な話題ですよね。
日産の発表によれば、高速走行が多い米国でニーズが高く、当初はインフィニティでの搭載を目指すが、左右センサーに関しては、年内に国内で発売予定の高級セダン・フーガに初めて採用される見込みとのこと。
市販量産化に向けては、現段階ではコスト面での課題があり、当面は高級車への搭載が中心となるが、コスト引き下げを進めることで小型車など搭載車種を拡充していく考え(日産)。昨今「技術の日産」を象徴する話題に乏しかっただけに、今回の新ASVが日産復活の先駆けになるのでしょうか。
このところ、HVで世界を一歩リードした感のある日本。日産の「ぶつからないクルマ」の米国投入で、自動車王国ニッポンが復活する日がまた近づいてきた・・・というのは飛躍的な表現かもしれませんが、夢のある話題として注目したいと思います。。。