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●人、●%、●億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

【20万円】 国会議員を目指す、という就活

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 このところ、衆議院議員選挙が近いとメディアでは噂が絶えませんね。経済厳しきご時世、政治の力が不況をどう克服していくのか。世論調査では民主党有利との結果が出ているようですが、果たして国民はどんな審判を下すのか。私はお世辞にも政治に関心が高いとはいえない市民ですが、それでも選挙の行方は気になります。

 先日、高校大学の同級生の紹介で、民主党愛知10区総支部長の杉本和巳さんと会う機会がありました。彼はまだ議員ではなく、現時点ではあくまで議員を志す青年です。年齢が私よりも1歳上ということで、非常に親近感がわいたこともあり、たまには政治の世界の話も聞いてみようかと、同級生とともに会うことになったのですが、なかなか興味深い話がたくさんあって、楽しい時間を過ごしました。

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 杉本さんは早稲田大学政経学部卒、日本興業銀行に入って後、ハーバード大学の大学院に留学、さらにオックスフォードでWディグリー 英オックスフォード大で Special Diploma in Social Studies 卒業資格を取得し、さらに米ハーバード大では修士号取得と、華々しい経歴を誇ります。その後、政治の世界を志してみずほ銀行を辞し、前回2005年の衆議院議員選挙に立候補したのですが、小泉政権時代の自民党圧勝に飲み込まれ、善戦しながらも落選。その後も、民主党国会議員から名古屋市長に転身した河村たかしさんバリに、毎朝の街頭アピールと自転車による地道な活動を続け、次の選挙を目指しているという熱血漢です。

 私が驚いたのは、彼が政治家を志したときに選択したプロセスです。政治家になるのに資格は必要ありませんが、いわゆる二世でもなく、またコネもない一青年がいきなり国政を目指して当選するほど甘い世界ではありません。私がいうまでもないことです。そこで彼が選んだのは、民主党の公募制度でした。これは、政治家としてのキャリアもコネもないような、たとえばサラリーマンで、志だけで政治家を目指すような人間を登用する制度。杉本さんはこの公募制度に応募し、見事に合格して民主党から国政を目指す公認を得ました。

 この公募制度で登用された者には、民主党公認という看板と、月々【20万円】の生活費と50万円の事務所運営費が支給され、政治活動を行うこととなるそうです。20万円の月給は、それまでに彼が得ていた収入に比すれば、とんでもなく低い額に違いないでしょう。それでも、最低限の生活保障がなされ、民主党の看板を背負って政治活動を行えるというのは、一般人にとっては超強力な支援の仕組みだと思います。杉本さんは、ビジネスエリートから政治家を目指し、公募制度を使って正面から挑みました。言ってみれば、

 国会議員を目指して就活し、
 とりあえず20万円の月給と、
 民主党公認という看板を得て、

政治家としてのスタートラインに立ったわけです。

 政治家になるには、俗に3つのバン、すなはちジバン(地盤=地元の支援組織、地縁血縁など)・カンバン(看板=知名度や実績)・カバン(鞄=選挙資金)が必要だと言われますが、杉本さんは蒼々たるビジネスキャリアを捨て、3つとも揃っていないハンデを敢えて背負って挑んでいます。その覚悟は相当なものだったはずです。

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 国会議員の選挙においても、地元の利益を代表する政治家を国政に送り出したいというのが、日本では当たり前の市民感情なのかもしれません。ただ国会議員は、国政に携わるのが役割であって、元々地元がどこだとかは関係ないという考え方もあります。杉本さんは愛知10区で生まれたわけでも育ったわけでもなく、いわば民主党の意向でこの地にやってきた人です。私はたまたま縁あって彼に会ったわけですが、彼が就活の拠点としてこの地を選び、草の根で政治活動を続けている姿を垣間見て、こんな生き方もあるんだと興味を掻き立てられました。

 彼が何をしてくれるのか、それはまだ未知数なのかもしれません。でも、公募制度を使って正面から政治の世界に飛び込み、ひたむきに就活している姿勢には、同世代として、心を動かされました。純粋に一人の男の生き方として、学ぶものが多くあったと思います。。。

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