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【2.75%】 三菱東京UFJ銀行発行劣後特約付期限前償還条項付無担保社債…が完売らしい

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 先日、銀行に立ち寄ったときのこと。窓口で時間待ちをしているときに、ふとチラシを手に取ったのですが、そこには【2.75%】という利率数字が記されており、「へぇーっ、すごーく高いかも」と思ったわけです。良く読むと、「期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)」と書かれており(しかしまぁ、これだけ漢字だけで並べられると、どこで区切るのかすらわからないし、意味不明だわ)、さらに「三菱東京UFJ銀行が発行する個人向けの円建て社債です」「期間約8年」とあります。「個人向け社債って、あんまり聞かないなぁ」「8年は長いなぁ」なんて勝手に思ったりしたわけですが、そこへすかさず、きれいなお姉さんが寄ってきて「何かお探しでしょうか」と声がかかりました。わたくし、もの欲しげな顔してたんでしょうか。。。

 ちょっとうろたえてモゴモゴしていると、、、「お客様、こちらの社債はすでに完売でして」「ひょっとしたら証券会社の店頭でしたらまだ購入いただけるかもしれません」とやさしく語り、笑顔を振りまいて次のお客さんに移っていったのでした。何だかほっとしたような、残念なような。

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 それにしても、債権というのは、一般人にはよくわかりませんね。一番なじみがあるのは、何と言っても国債でしょうか。私も(正確には奥さんが)買ったことありますよ、個人向け国債ってやつ。でも、社債といえば、企業向けに発行されるものだと思ってましたが、最近は違うんですね。

 調べてみると、最近、この個人向け社債が続々と発行され、注目されてるらしいんです。なぜ増えているかっていうと、その背景には、昨今の経済情勢が色濃く反映されているようです。元々日本では、企業が資金を調達する手段のひとつとして社債を発行し、それを機関投資家が引き受けてきましたが、最近は景気の先行き不透明感(うーん、良く出てくるフレーズだぁ)から、機関投資家もなかなか買ってくれなくなっているらしい。そこで、じゃぁ個人向けを、ということになったようです。まぁ単純。

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 今、金融機関の店頭に並んでいる定期預金などの金融商品は、とっても低利率。利率固定で、短期で、年利【2.75%】なんて商品は皆無でしょう。かといって株や為替などに素人は手を出しにくいわけです。そんなときに、8年というロング期間とはいえ、固定で【2.75%】は超魅力的。おまけに売り切れなんて言われると、資金もないのに、「エーッ、そんなぁ」なんて思うんですよね。定期預金よりもはるかに高利率で、有名企業が発行するものなら安全だろうし、、、ということで、今注目の金融商品らしい。そんな個人向け社債を発行する企業が続々出てきてるようなんです。

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 そこで、忘れちゃいけないのが、先ほどの長~いフレーズ、「期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)」ってやつですが、どうもココが怪しい。期限前償還ってことは、読んで字のごとく、8年まで待たずに、満期にしちゃう可能性もあるってことで、それは安全性としては問題ないと判断。で、劣後特約付きってトコロですが、これ、多少安全性が低いってことらしいです。もしその会社(今回でいえば三菱東京UFJ銀行)がデフォルトになっちゃったような場合に、全額チャラになる可能性があるらしいです。まぁ、なんて恐ろしい。通常社債の支払いが優先され、その次ということで、安全性に劣るということで劣後債と呼ばれています。だから、購入するときは、そこんとこをよく考えて買いましょうと。

 たとえば、あくまでも比較の話ですが、国が発行する個人向け国債と比べると、そりゃ国債の方が安全性は上でしょうね。つまり、日本という国が債務不履行になる可能性と、個々の企業がそうなる可能性を比べたら、さすがに国が×になる可能性の方が低いでしょうから。でも、常識的に考えると、三菱東京UFJ銀行がデフォルトになる可能性は極めて低いでしょう。だから、売り切れになっちゃうわけです。知人のFPに聞いてみたら、「多分、店頭に出回る前に個店のお得意様に電話で紹介して、売れちゃってるんでしょう」ですって。どおりで我が家には電話もかかってこなかったわけだ、ハハハ。。。

  ※参考サイト
    msn 
個人向け社債発行急増、その裏側にあるのは?
    FP総研 個人向け社債発行急増、その裏側にあるのは?
    大和証券 劣後債の人気とその特徴

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