【2万人】 派遣切り問題の被害者は、派遣労働者だけだろうか
景況感の悪化に伴って、連日報道されている「派遣切り」の問題。解雇を通告された派遣労働者の数はどんどん増え、年度末には数十万にもなるという予測まであり、深刻な社会問題化しています。これに対して、経済ジャーナリストの財部誠一氏が論評を発しています。
- 自動車業界を中心に凄まじい数の非正規労働者がクビを切られている。自動車業界だけでも【2万人】を優に超える。それも契約期間の途中で、いきなり解雇だ。年の瀬を目前に突然、寒空に放り出される人々の憤激と不安はいかばかりであろうか。クビを切られる側がクビを切る側に、厳しい叱責を浴びせるのは当然のことだ。
- だが、マスメディアが安っぽい正義感を振りかざして、 “派遣切り批判”を扇情的に繰り返す姿こそ批判されてしかるべきだ。 いざという時に雇用調整に踏み込むことは、企業として当然の経営判断だ。
※nikkeiBPnet 財部誠一の「ビジネス立体思考」2008年12月12日より一部引用
突然、ましてや雇用契約期間内の解雇を言い渡された労働者が顕わにする、解雇通告をした企業への憤りは、心情的に理解して余りあるものです。それには理解を示しながらも、問題の本質は違うと一刀両断し、派遣切りした企業を批判するマスコミの報道に対して、痛烈に批判を浴びせています。
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- 問題の本質は派遣切りをしている企業の体質ではなく、法制度にある。たしかに契約期間満了前に職場を追われる派遣労働者にしてみれば、理不尽きわまる差別行為となるが、現状の法制度のもとでは、違法ではない。一方、企業にしてみれば、あくまでも法律が定めるルールのなかでの判断だと言わざるを得ないだろう。
…中略…
- 厳しい国際競争をしながら、定められたルールのなかで雇用調整をした大企業に、情緒過多の非難を国中で浴びせることが、最終的にどのような結末につながるか。マスメディアは思慮がなさすぎる。
…中略…
- 需要急減時の雇用調整は世界の常識だ。100年に一度の経済危機といわれ、事実、とんでもない勢いで販売台数が激減している自動車業界にあって、いつでも解雇可能な雇用契約をしている派遣社員を解雇しただけで、極悪非道の扱いをうけたのではたまったものではない。
※nikkeiBPnet 財部誠一の「ビジネス立体思考」2008年12月12日より一部引用
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つい先日、近隣に住む後輩と話をする機会がありました。彼はフリーター期間中に資格をとって、正社員になりましたが、厳しい環境下でリストラの危機に戦々恐々としながらも、必死に耐えて仕事に取り組んでいました。彼は、クビになった派遣労働者に対して、「あまりに急で、契約期間内の解雇は非情であり、同情はする。でも、派遣である以上、それは受け入れなければならない。いやなら、正社員になればいい。彼らが全員、易きに流れた選択をしてこなかったと言い切れるだろうか。選り好みしなければ、正社員の道があったのではないだろうか。僕には守るべき家族がある。今、職を追われるわけにはいかない。僕は、仕事の中身ではなく、正社員として働けるかどうかで転職活動をした」と話していました。厳しい言い方なのかもしれませんが、私は彼のキモチに同感するものがあります。
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見方や立場を変えてみると、いろんな考え方ができます。確かに、解雇された派遣労働者=被害者、解雇した企業=加害者という図式は、一面的なものの見方なのかもしれません。そうした意味では、以前取り上げた学生の内定取り消しと同じような側面を感じます。ただ、今大事なことは、誰が加害者で誰が被害者かを議論することでもければ、加害者を非難することでも、被害者に同情することでもない気がします。みなさんはどうお感じになりますか。。。