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【2079】 「サービス」が「クレーム」に変わる瞬間~そりゃシステムじゃない、運用の問題でしょ

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 先日、とある市民病院に出かけた時のこと。その病院はまだできたばかりで、設備も機器もピカピカです。だから市民がこぞって訪れ、時間帯によっては駐車場渋滞ができるほど。聞けば病室も新しくて気持ちがいいらしい。入り口に掲げられたプレートには「最先端の医療サービスをご提供します」というフレーズが輝いています。

 正面玄関を入るとすぐ、案内窓口の脇にズラッと受付マシーンが並んでいます。まるで某家電店のポイントマシーンみたいだなぁと思いつつ、そこに診察券を通すと、受付番号と診察時間が印字された用紙が出てきます。私は予め診察予約をとっていましたので、11:00~11:30という時間が印字されています。これを持って各診療科に向かい、診察室前で順番を待ちます。診察室の扉の横には、電光掲示板が配置され、そこには「現在診療中の方の番号」「次に呼ばれる方の番号」「その次に呼ばれる予定の方の番号」の合計3つの番号が表示され、合わせて現在の待ち時間が表示されています。なるほど、新しい病院はサービスが違います。

 看護師さんが扉の前に出てきて、「中村さ~ん、中村昭典さ一ん、中にお入りくださ~い♪」なんて呼ばれるのを粛々と待っているのは、どうやら一昔前のお話みたいですね。最近は個人情報の観点からも、名前を読み上げるのを止めている病院も多いようです。

 混み合っている病院では、待ち時間にうんざりすることも間々ある話でしょう。この病院に設置された掲示板は、そんな待ち時間のイライラを多少でも緩和すべく、導入されたシステムだと思います。またこのシステムは、新しい病院では導入するところも多いようで、私自身も何度か見たことがあります。

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 待合い席に座って待っていると、診察を終えた患者さんが診察室から出てきました。看護師さんが「お大事に~♪」と声をかけています。そしてしばらくすると、掲示板が切り替わり、「ピンポーン」というチャイムに続いて「○○○○番の方、診察室○番へお入り下さい」とアナウンスが流れました。すると、あちこちから、ため息が漏れ、「どうなっとるんだぁ」「ウソばっかりやぁ、もう1時間以上遅れとるぞ~」みたいな声が聞こえてきました

 ん??? どうやら待っている患者さんの多くが不満顔です。完全予約制のはずなんですが、その日はかなり混み合っていて、診察室前の待合い席もほとんど埋まっています。まぁ、予定通りに行かないこともあるでしょうから、仕方がありません。最初は意味がわかりませんでしたが、、、掲示板をよ~く見ていると、みなさんのイライラの原因がわかってきました。

Photo←これがその電光掲示板です。よく見てください。普通なら、受付番号の若い(=小さい)順に呼ばれるはずですが、ご覧の通りバラバラです。検査などの都合で、多少順番が入れ替わることはあるでしょうが、しばらく見ていた限りでは、見事なまでに順番がランダムでした。これじゃ、待っている人には目安になりません。おまけに、予約進行状況の欄には「予定通り」と表示されていますが、実際は、どうやら1時間以上遅れていたようです。

 
 ちなみに私の受付番号【2079】番が呼ばれたのは、予定から1時間15分遅れのことでした。

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 この電光掲示システムが、みなさんの期待通りに表示されていれば、きっと待ち時間の精神的なストレス緩和にも役立つはずです。でも、順番はランダム、待ち時間の状況もアテにならない、となると、逆に患者さんには不満が募ることになります。

 「いつ呼ばれるかわからないから、外に出て娘に電話をすることもできないし、トイレにも行きにくいわ…」

 隣に座られた、おばあちゃんのつぶやきもわかります。新しい病院で、最先端の設備を入れても、これじゃ意味がありません。せっかく用意したサービスも、運用をしっかりしないと、クレームになってしまう典型的な例だと思います。

 「おばあちゃん、お待たせしてごめんねぇ~」という看護師さんの声が、妙に対照的で、印象に残っています。新しいシステムやピカピカの病室も嬉しいけど、やっぱりヒューマンな気遣いの方が、私には気の利いたサービスのように感じられました。古いのかなぁ、わたしも。。。

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