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●人、●%、●億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

【.99】 “iPhone”“Eee PC”“Windows Vista”に共通する、アメリカっぽい法則

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 今となってはかなり昔のことのように感じてしまうのですが、今年6月、サンフランシスコで開催された開発者会議・WWDCで、Apple社CEOのSteve Jobs氏がiPhone 3Gを発表した時のこと。そのプレゼンテーションでもっとも聴衆を驚かせたのは、「199ドル」という価格でした。第1世代のiPhoneは、8GBモデルで399ドルでしたから、半額という思い切った値下げは、確かにサプライズだったと思います。

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 iPhone 3Gの発表からちょうど1年前の2007年6月、台湾で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2007において、ASUSTeK社が発表したミニノートパソコンEee PCも、一番話題となったのが、北米での「199ドル」という販売価格でした。それ以降、Eee PCは「199ドルPC」と称されるようになり、日本でも今年1月に発売されて注目を集めました(もっとも、日本での発売価格は199ドルとはいかなかったとのですが)。たしかにノートPCで「199ドル」というのは、かなり大胆な低価格で、それ以降、日本でもミニノートPCの低価格化競争が一気に始まっています。

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 この2製品に比べると大変地味なんですが、実はWindows Vistaが2年前の2006年9月に発売となった時にも、Home Basic(パッケージ版)の「199ドル」という価格が話題になったことがありました。これはMicrosoft社が公式に発表する前にamazon.comがフライングで出してしまったことがニュースになったというのが真相なんですが。それはともかく、新しいOSの値段というのは、いろんな戦略性をもって設定されるわけで、「199ドル」という数値は、やっぱり意味があるわけです。

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 この「199ドル」という価格。ここには「こんなすごい製品が、なんと200ドルを切って登場したんですよ~」というメッセージを、できるだけ強く届けたいという意図が表れていると思うんです。だから、200ドルでもなく、また198ドルでもない。つまり、わずか1ドルの差は、インパクトを強く出すための表現だということです。紹介した3製品はたまたま「199ドル」ですが、この【99】という数値は、アメリカ人の合理的経済感覚を象徴するような数値だと思うわけです。

 アメリカでスーパーに行ってみれば一目瞭然の話ですが、店内には「※※※※ 1.99$」「※※※※ 5.99$」みたいなPOPがあふれています。またマクドナルドに行けば、Wチーズバーガーが「1.99$」。Tad's Steak Houseに行けば、Tボーンステーキが「10.99$」。アメリカ人が、この【.99】という数字をいかに好むのかは、街を歩けばよく判るはずです。イメージ広告を好まず、性能にせよ価格にせよ、どこが他社製品より優れているかを合理的にPRするのがアメリカにおける広告の基本。価格に【.99】が付くのは、スーパーの特売品に限ったことではありません。

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 日本では、スーパーの特売品に出てくるのが、「199円」「1,990円」ではなくて、「198円」「1,980円」が多いような気がします。なぜなんでしょう…この辺りは、日本人の国民性なんでしょうかね。もっとも今の日本では、オープンプライスが浸透しているし、さらに税込み価格表示が徹底されているので、表示される価格もバラバラになってしまっている感じがあり、アメリカのような一貫性が感じられません。

 国民性はともかく、一貫性があろうがなかろうが、少しでも安い方がいいというのは、どこの国民でも共通する感覚だとは思いますけど。。。

追伸

昨日、Googleの開発した携帯電話プラットフォーム『アンドロイド』をベースにした携帯電話「G1 phone」が発表されましたね。こちらは、199ドル、ではなかったですが、179.99ドルと、やっぱり今回の法則に当てはまっています。でもこの価格、iPhoneを意識した設定であることは間違いないですね。。。

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