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【86%】 高齢化の町を活性化させたのは、ITなのだろうか~後編

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 徳島県は上勝町の話題、その後編です。上勝町にマイクロソフトが目を付けたのは、町の【86%】の家庭に光ファイバーが敷設されており、先の高齢者のみなさんもITをフル活用しているという点でした。つまり、「ITを活用すれば、過疎や少子高齢化の課題を解決することにつながりますよ」というモデルケースとしたいという意図が見えてきます。「お年寄りはITに弱い」という固定概念も、「ほら、こうすれば大丈夫」という実例になるというわけです。たしかにそうした一面はあります。

 現に高齢者へのIT普及率が昨今急激に上がっているのは間違いありません。初心者でも取扱やすいパソコンの開発、らくらくフォンに代表される、高齢者の使い方にシフトした携帯電話の発売など、業界としても本格的に取り組みだした感があります。インターネットの世代別普及率(総務省・通信利用動向調査)を見ても、60歳以上の世代は5~13%と高い伸びを示しており、ITが高齢者に急激に浸透してきていることは数値から見ても明らかです。ましてや団塊世代の大量退職が騒がれ、この世代を大きなマーケットと位置づけて商機拡大を目論んでいる人たちが大勢いるわけで、巨人マイクロソフトが、その矢先に上勝町と手を組んだというのは、ある意味わかりやすい話ではあります。

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 でも。この町が活気づいたのは、ITの力でしょうか。【86%】の光ファイバーが敷設されたからでしょうか。もちろん町興しにITが大きく寄与したことは間違いないでしょう。でも、本当に大事なことは、このITを使って何をやるか、ということのはずです。「お年寄りたち」と、「葉っぱ」と、料理の「つまもの」を結びつけたアイデアこそが優れモノじゃなかったんでしょうか。それを商品として流通させるための仕組みを作り上げたことこそを評価すべきではないでしょうか。いきなりマイクロソフトの社長が乗り込んでしまったことで、一気にIT界で話題の町になってしまったようですが、ちょっと違う気がするわけです。当たり前の話ですが、最新型のデジカメを買えば写真が上手く撮れるかというと、そう甘くはないはずです。高性能のモバイルパソコンを買えば、プレゼンが上手くなることとは別問題なのです。スポットライトが当たるべきは、葉っぱを商品化したアイデアであり、その流通の仕組みであり、おじいちゃんやおばあちゃんたちのがんばる姿のはずです。マイクロソフトの登場以降、上勝町の話が、IT普及の成功例、なーんて取り上げられたりすると、何だか主役がすり替わってしまったような気がするのは、私だけでしょうか。。。

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