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ニューヨークのホームレス男性4人、Twitterで情報発信を開始

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ソーシャルメディアには人々をつなぎ、世界で起きている重要な問題に目を向けさせる力があることは、今回の北アフリカ・中東における事態を見ても明らかでしょう。しかし逆に言えば、かつてのGoogle八分よろしく、ソーシャルメディア上で活動しなければ「この世に存在しないも同然」ということになってしまいます。ソーシャルメディアがますます「いまの現実を写す鏡」のような存在になりつつある以上、デジタル・ディバイド的な問題が生まれてしまうことは避けられなければなりません。

その観点から見て、非常に興味深い取り組みがニューヨークで始まったそうです:

Homeless People Start Tweeting in New Awareness Initiative (Mashable)

"Underheard in New York"という取り組みがそれ。意訳すれば「ニューヨークの気づかれざる人々」といったところなのですが、ニューヨークに「住む」ホームレスの男性4人にそれぞれプリペイド式の携帯電話を渡し、さらにTwitterアカウントを開設してツイートしてもらおう、というもの(当然ながら携帯電話やTwitterの使い方はきちんとレクチャーしたそうです)。以下の写真に写っているのが、その4人の参加者となります:

underheard_in_newyork

左からDannyさん(@putodanny)、Derrickさん(@awitness2011)、Albert(@albert814)さん、Carlosさん(@jessie550)の4名。彼ら自身がツイートを投稿すると共に、この取り組みの様子が公式サイトでもレポートされています(現時点で14日目)。"Underheard in New York"プロジェクト自体の公式Twitterアカウントは@underheardinNY

このプロジェクトを始めたのは、広告代理店BBHに勤める3人のインターンとのこと。特に資金集めを考えているわけではなく、まずは「問題に気付いてもらう」ということを目的としているそうです:

The goal was to raise awareness and give a peek inside the daily struggles and unexpected challenges of being homeless in a major urban city.

このプロジェクトのゴールは、世間の関心を高め、大都市でホームレス生活を送る上で日々直面する、困難と問題について人々に垣間見てもらおうというものである。

(中略)

While Underheard in New York has no direct fundraising component, Weeks hopes it will help people better understand homelessness and inspire them to volunteer or donate to shelters like the NYC Rescue Mission. The Mission helped select the four men, who all sleep there at night. The Mission has a long-standing relationship with BBH.

"Underheard in New York"には直接資金を集める仕組みは設けられていないが、Weeks(プロジェクトを開始したインターンの一人)はこのプロジェクトによって、人々がホームレスについて理解を深め、NYC Rescue Missionのようにボランティアや住宅の提供といった行為を始めることを期待している。Rescue Missionはプロジェクトに参加するホームレスの選出を援助し、参加中の4人の男性は同施設で寝泊まりしている。またRescue MissionはBBH社と長期にわたり関係を築いている。

ホームレス問題については、単に家や職だけ与えれば良いというものではなく、様々な角度から考えなければならないでしょう。Twitterを始めさせるという手法についても、「ホームレスを見せ物のようにしてしまうのではないか」という批判が一部にあるようです。しかし個人的には、まずは問題の存在に気付いてもらうということ――チュニジアやエジプトだけでなく、ごく身近にも困難を抱えている人々がいるのだという事実に目を向けることが、解決への第一歩になると思います。インターネットやソーシャルメディアへの接続を「人権」として認めるべきではないかという議論すら登場し始めているいま、"Underheard in New York"のような手法が取り組まれても良いのではないでしょうか。

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またテクノロジーによってホームレス問題を「可視化」するという点で、以下のような取り組みが行われていたことも関連でご紹介しておきます:

バーチャル・ホームレス (Polar Bear Blog)

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