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Twitter「流行のトピックス」を左右するものは?

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いまTwitter上で何が語られているかを示す「流行のトピック」。スポーツからテレビ番組、政治や国際情勢に至るまで様々なキーワードがトレンドとして浮上してきますが、何がその「流行」をもたらすかについて、HPが興味深い研究結果を発表しています:

HP research shows mainstream media drive Twitter ‘trends’ to a surprising degree (The HP Blog Hub)

タイトルで答えが示されていますが、HPいわく、従来のマスメディアが「流行のトピックス」に対して非常に強い影響力を持っているとのこと。日本国内のみを対象にした「流行のトピック」はありませんが、類似機能を提供している国内のサービス(Buzztterなど)を確認していると、確かにいま放送中のテレビ番組に関するツイートが急増するといった現象をよく目にします。それでは芸能人など、フォロワー数の多いユーザーはどの程度影響力を持つのかというと:

“You might expect the most prolific tweeters or those with most followers would be most responsible for creating such trends,” says Bernardo Huberman,  HP Senior Fellow and director of HP Labs’ Social Computing Research Group.  But that turns out not to be the case.

In a new paper, Huberman and three fellow researchers demonstrate that “user activity and number of followers do not contribute strongly to trend creation and its propagation.”

Instead, says Huberman, “we found that mainstream media play a role in most trending topics and actually act as feeders of these trends.  Twitter users then seem to be acting more as filter and amplifier of traditional media in most cases.”

HPシニアフェローで、HP研究所内に設けられた「ソーシャルコンピューティング研究グループ」のディレクターを務めるBernardo Hubermanはこう語っている。「最も影響力のあるユーザーや、フォロワー数の多いユーザーなどが『流行のトピックス』をつくり出すのだと思うかもしれない。」しかしそれは現実とは異なるのだ、と。

新しく発表された論文の中で、Hubermanと3人の研究者たちは、「ユーザーがどれだけ活発か、あるいはフォロワー数がどれだけ多いかといった点は、トレンドの形成やその拡大にあまり貢献しない」ことを明らかにした。

その代わりに、とHubermanは語る。「主要メディアが大部分の『流行のトピックス』を生み出す上で重要な役割を果たしており、またそれが拡大するのを支援する役割も果たしているということを発見しました。」

とのことで、HPの研究では「さほど重要ではない」という結果が出ているようです。この研究自体がどれほど妥当なものかは別途検証する必要があると思いますが、「影響力のあるユーザーよりもマスメディアの方が『流行のトピックス』をつくり出す力がある」という結果は非常に興味深いのではないでしょうか。

仮にこの研究が正しいとすると、個人的にはTwitterがより実社会を写す鏡になっている、Twitter社自身の言葉で言えば「地球の鼓動」になっているということを示しているのではないかと思います。「マスメディアが影響力を持つ」などという結果は一見当たり前のことのように思えますが、流行のトピックスは「その瞬間に多くの人々が語っていること」を反映したものです。Twitterがリアルタイムなメディアでなければ、どれほどマスメディアに影響力があっても、それが即座にTwitter上に反映されるということはあり得ません。またTwitterのユーザー層に偏りがあれば、特定のテーマや(あるコミュニティの中での)有名人が影響力を持つはずです。従ってマスメディア上で発信されているトピックと、Twitter上で語られているトピックに関連があるというのは、それだけTwitterが現実をリアルタイムで切り取ったものになっているという証明になるのではないでしょうか。

であれば、HPのレポートは「Twitterを分析すればいま世界で何が起きているかが分かる」ことを示しているとも言えると思います。実際、Twitter上を流れるツイートを分析することで、数日後の株価予測が行えるという研究結果も発表されました(参考記事)。リアルタイムウェブの「リアル」は、「現実世界を反映する」という意味にもなりつつあると言えるでしょう。

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