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【シーズン1 第11話】アドテク=デジタルマーケティング?

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 デジタルマーケティングというと、アドテクを駆使しビックデータでセグメントを抽出し広告効果を高めること、と考える人がいますが、これらの「デジタルマーケティング=アドテク」というイメージは、日本にアドテック東京が進出し、デジタル広告業界人(eg.業界人間ベムさんの方々の情報発信力により定着したものです。

 しかし、少し冷静になって考えてみましょう。
 電通報に掲載されていた「広告志望の学生とマーケティング」で、電通の山田壮夫さんが、広告マン志望の学生向けに書かれていた以下の記事は示唆に富んでいます。

「アメリカマーケティング協会は"マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである"と定義しています。古典的にはProduct、Price、Place、Promotionの『4つのP』で整理されますが、いずれにせよマーケティングとは『市場創造のための総合的活動』を意味します。そして、残念ながら広告会社が主に手掛けるのはPromotionの半分にあたる『広告領域』に過ぎません。もちろん商品開発のお手伝いをすることもありますが、例えば麺のスープをとんこつベースにするか、チキンベースにするか、最終的な意思決定をするのは常にクライアントです。価格政策や流通政策に関与する機会も多いとは言えません。」

 つまり、アドテクは4Pのうち、「Promotion」の一部を行っているだけなのです。しかし、たくさんの人が来場するアドテック東京や、声の大きい業界人の影響から「アドテク=デジタルマーケティング」と錯覚している人が多いのも事実です

 B2B企業は、広告を求人目的に活用することがありますが、素材や部品の販売に直接的に結び付くものとして捉えていないので、一般的にアドテクにフォーカスすることはありません。逆にアドテクにのめり込みやすいのはB2B2C企業です。なぜなら、自社の商品を販売するのは小売なので、どんな人が購入したかなどの情報を得にくい立場にあるため、広告をできるだけ「個」に向けて効率よくしたいという欲求が強くあるからです。

 山田壮夫さんが言うように電通のような広告代理店は基本的に外部からマスのPromotionを行う訳ですから、B2B2C企業は自社が「個」のデータを集約したいならば、プライベートDMPなどのアドテクが駆使できる新タイプのハウスエージェンシーが有益な存在になります。この流れを受けてかどうかは分かりませんが、事業会社が主体で参加するデジタル広告の業界団体であるWeb広告研究会の今年のテーマは、「脱 媒体別戦略 ~媒体別戦略から、生活者別戦略へ~」と宣言されています。

 縦割りの組織を横串で横断するには、すべてのサイロの上位に立つか、第三者的に水平移動しやすい機能・組織でなければ難しいものです。ある意味、(ドメステックに限定すれば)ハウスエージェンシーがその解決策のひとつになることは確かでしょう。

 現在のアドテクでは「個」を特定の個人として認識するのではなく、クッキーとして認識しています。しかし、残念ながら普及が進むスマホのアプリではクッキーが通用しませんクッキーは死んだネット戦略の要技術が消える 「クッキー」の功罪)。この問題はテクノロジーの進歩がいずれ解決すると楽観するか、あるいはクッキーのようにディファクト化されていない先進の技術(Adtruthなど)で解決するか、いずれにしても、クッキーで「個」を認識する方法は深刻な問題を抱えていることだけは確かです。

 今年3月に行った「オム二チャネルペルソナの開発と実装における失敗研究」で、日本にペルソナをビルトインした白根英昭さんが紹介されたイリノイ大学のパトリック・ホイットニーさんの以下の言葉は、デジタルマーケティングに携わるすべての人に届いて欲しいものです。

「精密に間違うのでなく、大まかに正しいことを目指すべきです。」

● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/


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