昨日、日本企業の多くや、米国の確立された伝統的な企業では、ITにおいてリスクを取りたがらない傾向があると書きましたが、それはなぜでしょうか? 私の経験から書いてみたいと思います。
先ず、リスクを取れば、失敗する可能性があります。それに人と同じことをしている方が楽です。
イチローのメジャーリーグ挑戦には大きなリスクがあったと思います。しかし、彼が日本の野球界を去り、メジャーリーグでプレーしたことで、彼はより大きな成功を収め、ベースボールがよりグローバルなスポーツになりました。
また、伝統的なITマネジャーがリスクを取りたがらないのは、選択肢が限られ、オルタナティブ(代替案)も少なかったからだと思います。1960年代から70年代は、基本的にメインフレームしか選択肢がありませんでした。しかも、それは少数のベンダーによって独占されていました。
1980年代から90年代になると、PCが登場し、選択肢が増えたのですが、残念ながらすぐにマイクロソフトとインテルによって独占されてしまいました。
しかし、今のコンピュータの世界は、たくさんの選択肢があり、仮に選択した結果がうまくいかなかったとしても、良いオルタナティブがあります。これがまさしくオープンシステムということです。
サンにおいてもいくつか例を挙げることができます。
1990年代、サンはオープンスタンダードアーキテクチャーとして自社のRISCコンピュータをデザインしました。われわれのRISCコンピュータを導入しようと選択した顧客にとって、それはメインフレームに対する優れたオルタナティブになったと思います。仮にそれがうまくいかなかったとしても、他社、例えば、富士通が同じアーキテクチャーに基づいた製品を開発して提供しています。
また、Solarisも素晴らしいオルタナティブだと思いますが、ほかにもさまざまなUNIXの派生が市場にあるほか、いずれはLinuxもオルタナティブになり得ると思います。
そして、もちろんJavaもそうです。ソフトウェアを書き、サービスを開発していくためのオルタナティブです。われわれはJCP(Java Community Process)という互換性を維持しながら革新を加速させる仕組みをつくり、あるときは競合するプレーヤー同士が協力して、Javaのさまざまなオプションが提供されるようにしました。これは素晴らしい選択だったと思います。
ITリーダーにお願いしたいのは、もっともっと新しい技術にトライしてほしいということです。それをせず、クローズドなベンダー固有の技術で囲い込まれたままでいる方がもはやリスクは高いのだということを理解してほしいのです。