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IT業界を四半世紀見てきたジャーナリストのこだわりコラム

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2007年4月21日 »

 日本郵政公社が10月の民営化で発足する「ゆうちょ銀行」の基幹システムを一括購入する方針を決めたとか。今朝の日経新聞によると、5月末に一般競争入札をし、6月初めに購入先を決めるそうです。大手銀行の基幹システムを全面的に買い取る方向で、これに対し日立製作所が旧UFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)のシステムを提案するほか、複数の大手システムベンダーも応札を検討しているようです。

 大手銀行の基幹システムは、世の中にあるコンピュータシステムの中でも最も巨大かつ複雑なものの象徴として捉えられてきました。システムベンダーにとっても、大手銀行に基幹システムを納めていることが「大手」の証となっています。大手銀行はこの10年ほどの間にさまざまな合従連衡を経てきましたが、基幹システムを納めているベンダーは、三菱東京UFJ銀行にIBM(2008年末にシステム完全統合予定)、みずほ銀行に富士通、みずほコーポレート銀行に日立製作所、三井住友銀行にNECといったように、今も大手4社が分け合う格好となっています。

 そうした状況の中で、今回のゆうちょ銀行の基幹システムの選定は、大手銀行にとってもシステムベンダーにとっても「最も優れたシステムはどれか」が示される格好の機会ともいわれるだけに、大きな関心を呼んでいるようです。

 およそ10年前、IT担当の新聞記者だった頃に、当時はまだ11行あった都銀や大手システムベンダーを取材して「都銀・巨大システムの行方」と題した連載記事を書いたことがあります。その行方にコンピュータ産業の次の姿があると思ったからですが、その後のダイナミックな動きは皆さんも周知の通りです。

 ただ、その取材を通じて今も強く印象に残っているのは、都銀にしてもシステムベンダーにしても、担当者たちの自らのシステムに込めた情熱と、他行のシステムに対するライバル意識むき出しのエネルギーです。その後の合従連衡でそれぞれの立場にいた担当者たちには悲喜こもごもな動きがあったでしょうが、そうしたエネルギーは今も変わっていないと思います。ましてや今回は“敗者復活”の可能性も大いにありそうな……。またドラマがひとつ生まれそうです。

Isao Matsuoka

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