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IT業界を四半世紀見てきたジャーナリストのこだわりコラム

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2007年3月23日 »

 今日、とても気になる新聞記事がありました。その記事によると、日本郵政公社が2007年の民営化に向けて3年前から導入したトヨタ自動車の生産方式をめぐって混乱しているとのこと(朝日新聞10月29日付け朝刊)。同公社が採り入れたのはトヨタ方式を応用した「JPS(ジャパン・ポスト・システム)で、表向きはその効果を強調していますが、全国の郵便局を「査察」したお目付け役のトヨタ社員によると、「81%がデタラメ局」「うその報告をあげている」などと厳しく指摘。一方、現場からは「作業が混乱し、効率は低下した」などと批判が相次いでいるとか。

 一面に大きく取り上げられていた記事なのでご覧になった方も多いと思いますが、こうした話が表沙汰になることはあまりありません。この記事が載った経緯は分かりませんが、内容から推察すると、おそらく現場からのリークだと思われます。いずれにしても組織全体として、JPSの実践にあたって相当閉塞状態にあることが感じられます。

 この記事を読んで私が強く感じたのは、ITによる企業改革もまったく同じ問題を抱えているということです。トヨタのカンバン方式にせよITにせよ、どんなに素晴らしい手法を持ち込んでも、それで自分たちの会社や組織を強くしたいという思いが社員全員にないと、改革はうまく行かないのです。この点は、私自身もこれまでの取材活動を通じて痛感しています。そんな思いから、『アイティセレクト』では「企業のIT化にはマネジメントが不可欠」とのメッセージを発信し続けてきました。

 新聞記事からは、郵政公社のJPSへの取り組みにおいて、改革に対する現場のモチベーションを高めるためにトップマネジメントがどう動いたのか、一大プロジェクトとしてどういう態勢をとったのか、読み取れませんでした。超大組織ですから、一筋縄ではいかないでしょう。時間もかかるかもしれません。でも現場から「郵便局の仕事は自動車の製造とは違う」という声があがってくること自体、トップマネジメントが大元のところで一番大事なことを外してしまったからではないかと思えてなりません。

 改革を成功させるのは、仕組みでも手法でもなく、「人」であることを今一度肝に銘じたいものです。

Isao Matsuoka

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松岡 功

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『ITmedia エグゼクティブ』(アイティメディア発行)編集委員。ビジネスおよびマネジメントの視点に立ったIT活用を追求しています。

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