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IT業界を四半世紀見てきたジャーナリストのこだわりコラム

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 「IT投資を本気になってやっていく」
 6月26日に行われたソニー首脳陣の記者会見で、中鉢良治社長がこう意思表明しました。なかでも緊急の課題として掲げたのは、ソフトウェア開発を支援する仕組みの構築。さらに、これまで部門や地域ごとにシステムがバラバラに動いていた「部分最適」の状態を、できるだけ早く「全体最適」の形に持っていけるよう注力すると強調しました。

 中鉢社長のこの発言を聞いて、本日発売の『月刊アイティセレクト』8月号の編集長インタビューに登場いただいた木村裕之シマンテック社長が語っておられた言葉を思い出しました。
 「日本企業のIT投資は、ともすれば場当たり的で、部門ごとに最適化してしまっているケースが少なくありません。経営環境が少し良くなってきた今こそ、全体最適に向けた戦略的投資を行うべきです」

 ではなぜ、これまでIT投資が部分最適にとどまってしまい、全体最適へと進まなかったのでしょうか。その最大の理由はトップのコミットメントの弱さにあると、私は思います。誤解を恐れずに言うと、この論議は技術論ではありません。全体最適は、システムをどうこうするという話ではなく、自らの会社のビジネスのあり方をどうしたいのか、マネジメントの仕組みをどうしたいのか、を明確にすることから始めなければ実現し得ないのではないでしょうか。その役目を担うのは、まさしく経営トップにほかなりません。

 その意味では、中鉢社長が会見で緊急の課題として掲げたソフトウェア開発を支援する仕組みの構築も、ビジネスおよびマネジメントの仕組みをこう変えたいという、ひとつの意思表示だと読み取ることができます。
 全体最適に向けた戦略的なIT投資を「本気でやる」との中鉢社長の力強いコミットメントは、日本を代表する企業の1社であるソニートップの発言だけに、他の企業へも少なからず波及効果があるではないでしょうか。ソニートップの発言が、日本企業のIT投資に向けた取り組み姿勢を変化させるターニングポイントになることを大いに期待したいところです。

Isao Matsuoka

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『ITmedia エグゼクティブ』(アイティメディア発行)編集委員。ビジネスおよびマネジメントの視点に立ったIT活用を追求しています。

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