« 2012年2月1日

2012年2月6日の投稿

2012年2月7日 »


ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下の米国大手スポーツ専門チャンネルESPN(日本語ではイーエスピーエヌと発音する)のモバイル事業部門の責任者マイケル・ベイルが、先月(2012年1月25日‐28日)開催された「MediaPost's Mobile Insider Summit」 カンファレンスで、「モバイルが1番目のスクリーンである」と発言したニュースが米国でちょっとした話題になっている。

モバイルが1番目のスクリーンだという発言は、モバイルがテレビとPCよりも重要な端末であることを示唆する、モバイルにとって非常に重要な意味を持つ発言だ。遡れば、グーグルの元CEOエリック・シュミットが、2010年2月にバルセロナで開催された「Mobile World Congress」カンファレンスで、”Mobile First”という言葉で来るべきモバイル時代の幕開けを宣言してからわずか2年でそれが実現したことになる。


1


今回は、ESPNが最近ローンチしたアプリを参照しながら、ESPNのモバイル戦略とスポーツビジネスにおけるモバイルの可能性について考えてみたい。

⇒ Mobile First関するベンチャービートの記事

⇒ Mobile First関するPCマグの記事 

⇒ ESPNのFirst Screenに関する記事 


【1】 ESPNのモバイル戦略について

ESPNにとってモバイルがいかに重要であるかを示す数字がある。まず、2011年にESPNのモバイルコンテンツの利用に消費した時間が前年より45%も増えているという。また、ESPNのモバイルからの視聴者は2,000万人を超えており、その上常に15万人が接続されているENPNにとって4番目に大きなネットワークに成長しているとのこと。

 

● 数字で見るESPN

 ① 2011年のモバイルの利用時間は前年度より45%増えている。

 ② モバイルからの視聴者は2千万人を超えている。

 ③ 15万人が常時接続されている。

ESPNにとって、モバイルはコンテンツ戦略の根幹を成すものであり、新しい番組を企画する場合でもまずモバイルへの対応を1番目に考え、その後にテレビ、ウェブ、印刷物への対応を考えるという。つまり、コンテンツの企画を考えるスタート地点がモバイルになっているというのだ。そして、こうした背景が「モバイルが1番目のスクリーンである」との発言につながっていく。

 

● コンテンツの企画はモバイルへの対応を1番目に考える

また、モバイルは視聴者を増やすためにも重要であり、特に海外市場を見据えた国際的観点から見た場合、モバイルは視聴者を増やすために欠かせないという。つまり、海外市場の観点から見ても、モバイルは最優先するべきメディアになっているということだ。

では、ESPNは実際にどのようなモバイル戦略を実行しているだろうか。ESPNが最近ローンチとしたコンテンツを見てみたい。


【2】 ESPNのモバイル戦略にとって重要なアプリ

ESPNのモバイル戦略を語る上で外せないのが、昨年から力を入れているタブレット用のアプリ開発だろう。

① WatchESPN

WatchESPNは、アップルストアから無料で入手ができるが、残念ながら日本ではダウンロードができない。よって、ウェブで調べた記事をベースに概要を伝えたい。

WatchESPNは、タイムワーナーケーブル、ブライトハウスネットワークス、ベライゾンFiOsテレビの会員であれば、iPadからライブイベント映像が見れることから、米国のユーザの間ではかなり話題になったアプリだ。日本で利用できないのが本当に残念。

現在はiPhone用アプリも提供されているらしく、WatchESPNでは現在以下のビデオコンテンツの視聴が可能だとのこと。

 ・NBAのレギュラーシーズンとプレイオフ
 ・メジャーリーグベースボール
 ・アメリカンフットボール
 ・マスターズ、USオープン、
 ・大学のフッボール、バスケットボール、バークレイプレミアリーグ
 ・テニスの4大大会他

これらのコンテンツは、全てライブストリーミング配信されており、会員は、お気に入りのESPN番組にアクセスしてライブビデオを視聴することができる。

尚、WatchESPNのコンテンツは、ウェブサイト上でも視聴することができるので、内容はこちらで確認してほしい。

⇒ WatchESPNのウェブサイト 


● WatchESPNアプリのキャプチャー画面

2


② ESPN The Mag

ESPNは、WatchESPN以外にも有料・無料のアプリを数多くローンチしているが、日本でも利用できるアプリとして、ESPN The Magがある。ESPN The Magも無料で提供されており、特に会員登録などをしなくてもビデオコンテンツの視聴やマガジンのダウンロードができる。ESPNのコンテンツを手っ取り早く体験してみたいというユーザには持って来いのアプリだ。

※ ESPN The Magはアップルストアから無料でダウンロードできる。


● ESPN The Magのキャプチャー画面

3

4


ESPN The Magで一番お薦めのコンテンツはやはりビデオだ。スポーツファンの興味を離さない試合のハイライト、ダイジェスト、インタービューなどの高品質なビデオがたくさん用意されている。

ESPNがアプリに比重を置くのには理由がある。モバイルからコンテンツにアクセスするトラフィックを調査したところ、トラフィックの大部分がアプリからだったという。ESPNの場合、メインコンテンツはライブとオンデマンド両方の形式で提供するビデオになる。ビデオへのアクセスには、モバイル専用サイトよりもアプリが向いているということなのだろう。

ESPNによれば、今後もアプリ開発への投資は増えるだろうとのことだ。


【3】 今回のまとめ

ESPNにとって、モバイルは、大量のビデオコンテンツと消費者、そしてテレビ、ウェブ、紙媒体などのメディアを接続するゲートウェイの役割を果たしている。モバイルはESPNのクロスプラットフォーム戦略の中心として機能しているのだ。

ESPNは、テレビの視聴率を増やすためにも、モバイルへの投資は今後も欠かせないと判断している。ESPNにとって、モバイルとテレビは視聴率を奪い合うものではなく、お互いを補完し合う関係になっていると言っていいだろう。モバイルをきっかけにESPNを知ったユーザは、違う目的のためにテレビの視聴を検討するようになるのだという。

ESPNによれば、モバイルを中心としたクロスプラットフォーム戦略は、消費者だけではなく、広告主の企業にもメリットをもたらすという。ESPNの番組に広告を出稿したいが、テレビ、ウェブ、印刷物に出稿する予算がない企業にとって、モバイルはコストをあまりかけずにESPNのスポンサーになるベストな方法だという。

“Mobile 'First Screen‘(モバイルが1番目のスクリーンである)”は、現時点ではスポーツビジネスに限ったことなのかもしれない。しかし、スポーツ以外のコンテンツ、音楽、映画、アニメなどの分野で“Mobile 'First Screen‘(モバイルが1番目のスクリーンである)”が叫ばれるようになるのは、もはや時間の問題だろう。

最近のモバイルの勢いを見ていると、そう思わざるおえない。

⇒ 「ESPN Deems Mobile 'First Screen'」 

itoman

« 2012年2月1日

2012年2月6日の投稿

2012年2月7日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のコメント
最近のトラックバック
カレンダー
2012年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
itoman
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ