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米国のリサーチ会社ForeSeeから、2011年のホリーデーシーズン期間における、米国小売事業者TOP40のイーコマースサイトを対象にした詳細な顧客満足度評価に関するレポートが公開された。このレポートが非常に興味深いのは、ホリデーシーズン期間に関するレポートの多くが売上や収益に関する内容のものであるのに対し、今回ForeSeeが公開したレポートが、イーコマースサイトに対する買い物客の顧客満足度評価に関するものであるという点だ。

売上と収益がイーコマースサイトの成功・不成功を評価するための重要な指標であることは間違いないが、顧客満足度も売上と収益同様重要な評価指標であると考えることができる。なぜなら、小売事業者にとって、自分たちのイーコマースサイトが顧客にどんな評価をされているのかを知ることは、新しいマーケティング戦略を考える上で非常に有用な情報となるからだ。

そこで今回は、このレポートの分析結果から、イーコマースサイトにおける顧客満足度の高い・低いがなぜ起こるのか、その原因について考えてみたいと思う。尚、ForeSeeから公開された”The ForeSee E-Retail Satisfaction Index (U.S. Holiday Edition) 2011.”は、以下のウェブサイトからダウンロードすることができる。興味のある方は、是非ダウンロードしてみてほしい。

⇒ The ForeSee E-Retail Satisfaction Index (U.S. Holiday Edition) 2011


【1】  2011年度の顧客満足度は過去最高となる。第1位はアマゾン


■ 平均顧客満足度評価は79ポイントと2009年に並んで過去最高となる

米国の小売事業者TOP40のイーコマースサイト全体に対する顧客満足度評価の平均は、79ポイントとなり、2005年に調査を開始して以来最高(2009年も79ポイントを獲得)の評価を得る結果となった。2010年に1ポイント下がって78ポイントなっているものの、2008年迄は74と75の間をさまよっていたことを考えると、この3年間は全体的に高い顧客満足度を獲得しているということがわかる。

ここで注目したいのは、調査を開始してから7年間で全体平均が5ポイントもアップしたことだ。この全体の平均ポイントが7年間で5ポイントも上がったという事実は、米国の小売事業者が毎年イーコマースサイトを改善し続けていることの証明でもある。たゆまぬ努力の結果が、高い顧客満足度評価になって現れていると言ってもいいだろう。参考までに、ForeSeeによれば80ポイント以上が”エクセレント”という評価になるらしい。よって、合格点をもらうにはもう1歩といったところだろうか。

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■ 第1位はアマゾンで、最下位はオーバーストックドットコム。苦戦しているギャップ

ただ、事業者別の評価を見ると、”エクセレント”の80ポイントをクリアしたオンライン小売事業者が全部で15社もある。また、上位と下位とではかなりの差が開いてしまっていることがわかる。第1位は88ポイントでアマゾン。アマゾン以外の上位ランキングには、QVC、エイボン、アップル、JCペニー、LLビーンを始めとした日本でもおなじみの小売事業者が顔を揃えている。

一方、最下位は72ポイントのオーバーストックドットコム。1位のアマゾンとの差はなんと16ポイントも開いてしまっている。そして、39位が73ポイントのギャップだ。しかし、調査開始当初のワーストは、69ポイントかあるいは69ポイントを下回っていたことが多かったのだが、ここ最近5年間は70ポイントを下回る小売事業者がでていないことから、全体の顧客満足度評価は上がっていると考えることができる。

ここで注目したいのは、なんと言っても39位に甘んじているギャップだろう。正直言って、ギャップのイーコマースサイトの顧客満足度評価がこれほど低いとは予想もしていなかった。ギャップは、ここ数年間低評価に苦しんでいる。調査を開始した2005年の78%をピークに年々下がり続け、一時は69%にまで落ち込んだほどである。

オーバーストックドットコムもギャップと似たようなものではあるが、ForeSeeによれば、オーバーストックドットコムの場合は、春に調査を行うともっと高い評価になるということだ。そういう意味では、オーバーストックドットコムは、初めて訪問してくる顧客やホリデーシーズンに訪問してくる顧客に対する対応が苦手なのかもしれない。

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■ 対前年比で最もポイントを上げたのはタイガーダイレクトドットコム

前年から最も評価ポイントを上げたのは、コンピュータ機器のイーコマースサイトを運営するタイガーダイレクトドットコム で、6ポイントも評価ポイントを上げている。

以降、5ポイントアップのJCペニー、4ポイントアップのデル、3ポイントアップのビスタプリント、ホームデポ、メイシーズ百貨店と続いている。

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■ 調査開始から7年間で最もポイントを上げたのはメイシーズ百貨店

調査を開始した2005年から、この7年間で10ポイント以上評価を上げた小売事業者は全部で2社しかない。中でも、最も評価ポイントを上げたのはJCペニーで、2005年の71ポイントから12ポイント上げて83ポイントとなっている。もう1社はコストコで、69ポイントから10ポイントから上げて79ポイントとなっている。奇しくも流通業の2社が、この7年間で大幅に顧客満足度を上げたことになる。

以降、9ポイントアップのホームダイレクト、8ポイントアップのエイボン、7ポイントアップのアップル、ベストバイ、メーシーズなどが続いてる。このランキングを見て意外だったのは、アップル、アマゾン、デルといった大手でさえ、たゆまぬ改善を継続することで顧客満足度評価を着実に上げているという事実。このランキングに名前があがっている小売事業者は、顧客満足度を高めるために毎年改善することを継続し続けてきた、顧客志向の強い企業ばかりだと言っていいだろう。

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■ 調査開始から最も評価ポイントを下げたのはネットフリックス

評価を上げた小売事業者とは反対に、調査を開始した2005年からこの7年間で最も評価を下げたのはネットフリックスで、2005年の87ポイントから7ポイントも下げて79ポイント。次はギャップで、78ポイントから5ポイント下げて73ポイント、オーバーストックドットコムが76ポイントから4ポイント下げて72ポイントとなっている。

ここでの注目はやはりネットフリックスだろう。ネットフリックスは、調査開始から2010年までは、常にアマゾンとトップの座を争う存在であった。と言うよりも、どちらかと言えば、ネットフリックスの方がアマゾンよりも評価が高かったくらいである。わずか1年半前までは、ネットフリックスが記録した87ポイントは、アマゾンに今回破られるまで調査開始以来最高のポイントだったことがその事実を物語っている。

2011年になってネットフリックスが大きく顧客満足度評価を下げた原因の1つに、2011年に実行したサービス利用料金の値上げが影響していることは間違いない。料金の値上げ自体はホリデーシーズン前だったが、結果としてこの料金の値上げが後々まで尾を引くカタチとなってしまったと考えるべきであろう。

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【2】 明暗を分けたアマゾンとネットフリックスの差

2008年から2010年までの3年間、いつも1ポイントという僅差の争いを繰り広げてきたアマゾンとのネットフリックスが、2011年になって7ポイントもの大差がついしてしまった原因はどこにあるのだろうか。そこには、顧客満足度に対する企業の取組み方明確な違いがあった。

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■ 顧客満足度を考えながら毎年改善を続けたアマゾン

84ポイントで85ポイントのネットフリックスに次いで2位だった2005年以来、アマゾンは毎年改善を続けながら顧客満足度の向上を目指して行くことになる。豊富な商品ラインナップと商品在庫、注文した商品の在庫が確認できれば注文した当日に配達してくれるサービス、できるだけ安い価格、豊富なユーザレビューなど、今となっては大して珍しくもないこれらのサービスは、ほとんどがアマゾンの始めたサービスだ。

特に、商品のラインナップは、ここ数年もの凄いスピードで増えている。ローンチしてしからしばらくの間、書籍専門のオンライン小売事業者だったことを忘れてしまいそうなくらい、現在のアマゾンは様々な商品を取り扱っている。日本ではまだ利用できないが、ビデオの有料ストリーミング配信サービス事業に参入したことはまだ記憶に新しいところだろう。また、最近になってもタブレットを自社で製造・販売したり、その勢いは衰えることを知らない。

アマゾンが顧客満足度向上のために改善を繰り返し続けたのは、何もサービス面に関することばかりではない。機能的にもここ最近大きな進歩を見せている。それは、ビデオとタブレット対応だ。

アマゾンは、作者自身がビデオで自分の作品の特徴や完成までの苦労話などを顧客に提供できる機能をローンチした。この作者が自分自身でビデオをアップロードできる機能は、その作品(書籍やDVDなど)を購入しようかどうしようか迷っているユーザの購買意思決定に大きな影響を与える。直接その作者の声を聞いたり作者の映像を見ることで、その作品に対して親近感を覚えることになるからだ。

また、2011年の9月に、真っ先にタブレットコマースに対応するために、ユーザインターフェースを再設計したのもアマゾンが最初だった。KindleFireの製造・発売を予定していたアマゾンは、イーコマースの未来がタブレットにあることを知っていたに違いない。タブレットユーザが使いやすいように、ボタンを大きくしたりユーザインターフェースのデザインを大きく変えている。

⇒ ウォールストリートジャーナルの「Amazon Tests Website Redesign

⇒ アレクサンダーインタラクティブの「Amazon Redesign:A Small Step Towards T-Commerce

以上の事実からも明らかな通り、アマゾンの継続的な顧客満足度向上に対する取組みが、今回の調査の88ポイントという高い顧客満足度評価ポイントに結びついたことは間違いない。


■ 顧客満足度を考えることがなかったネットフリックス

一方のネットフリックスは、顧客満足度に対する取組みをないがしろにしてしまったため、取り返しのつかない大きなミスを起こしてしまうことになる。2011年、ネットフリックスは2つの大きな過ちを冒してしまった。

1つ目の過ちは2011年の7月に起こった。ネットフリックスが、突然利用料金の値上げを発表したのだ。しかも、その値上げ幅が消費者と市場に大きなインパクトを与えた。なんと、最大60%の値上げを決行したのである。この突然の大幅な値上げによって、ネットフリックスは消費者からソッポを向かれてしまう。冒した過ちの代償は、会員数が一気に60万人も激減するという非常事態となって跳ね返ってくる。

2つ目の過ちは、主力事業としてネットフリックスの一番の収益源だったDVDレンタル事業を、別会社化するという計画を発表したことだ。この発表によって、会員数だけではなく株価も大きく落ち込み、ネットフリックスは社会的信用も失うことになってしまう。最終的にこの別会社化の計画は頓挫することになるが、ネットフリックスが受けたダメージははかり知れないものがある。

事件が起きる前までは優良企業としてもてはやされていたネットフリックスが、2011年にに続けて2つの過ちを冒したのは偶然だったのだろうか。私は、もともと顧客満足度を無視続けていたツケが、2011年になって一気に吹き出して来たと考えるのが自然だと思っている。7ポイントも下がった顧客満足度を取り戻すのは、そう簡単なことではない。


【3】 なぜイーコマースサイトの顧客満足度評価が重要なのか


■ 高い満足度を抱いた買い物客の行動パターン

なぜイーコマースサイトの顧客満足度評価が重要なのだろうか。そこには明確な答えがある。米国顧客満足度指数を評価する方法論をまとめた米国の非営利団体ACSIの報告によれば、イーコマースサイトに高い満足感を抱いた買い物客は以下の行動パターンを取る傾向が強いという。

★ 高い満足度を抱いた買い物客の行動パターン

① オンライン、オフラインを問わず次も購入する

② 忠誠心を抱く

③ 他人に口コミで薦める

つまり、高い顧客満足度を抱いた買い物客は、単なる顧客からそのイーコマースサイトに一生忠誠を尽くすファンに変わる可能性があるということだ。だから、イーコマースサイトの顧客満足度評価は重要な意味を持ってくる。

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■  高い満足度を抱いた買い物客はファンになる

今回のオンライン小売事業者TOP40を対象にした調査でも同様の結果が出ている。

★ 評価ポイント80以上を獲得した小売事業に対する買い物客の行動パターン

① 買い物客の68%が次もイーコマースサイトで購入したいと思っている。

② 買い物客の48%オフラインで購入したいと思っている。

③ 買い物客の64%が似たような商品を購入する時に利用したいと思っている。

④ 買い物客の65%が忠誠心を感じている。

⑤ 買い物客の52%がイーコマースサイトに戻って来たいと思っている。

⑥ 買い物客の59%がお店全体に満足度を感じている。

⑦ 買い物客の67%が家族や友人にイーコマースサイトを推薦したいと思っている。

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【4】 今回のまとめ:買い物客の顧客満足度がイーコマースサイトの成否を決める

高い顧客満足度を抱いた買い物客はイーコマースサイトに多くの利益をもたらす、それが今回の記事で伝えたかったことだ。イーコマースサイトを運営する事業者はもちろん、イーコマースサイトの業務に携わる全ての人に読んでもらい、イーコマースサイトに対する買い物客の顧客満足度を調査することの重要性を知ってもらえればと思っている。

最後に、イーコマースサイトの顧客満足度を高めるために有効だと思われる機能を3つ考えてみた。

①    ソーシャル連携

ソーシャルコマースへの対応はこれからのイーコマースサイトに必須だ。ファン化した顧客とコミュニケーションするためにも是非対応しておきたい。

②    モバイル(特にタブレット)対応

モバイル、特にタブレットへの対応も必須だ。アマゾンやアップルがいち早く対応したように、イーコマースサイトのデザインをタブレット対応用に再設計する必要がある。

③    リッチコンテンツ(特にビデオ)の導入

リッチコンテンツ、特にビデオの導入も必須だ。ビデオは、ファン化した顧客とのエンゲージメントに高い効果を発揮する。手間とコストは若干掛かるが、その効果は絶大である。

ご意見・質問があれば気軽にメッセージを下さい。

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伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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